67歩目 ページ29
演奏が終わった後またホール裏に来たAは、
「行くよ！A！」
「え！？ちょっ」
蒼に手を取られいきなり全力疾走することになった。ホール裏を駆け、階段を昇ったところにある空き教室。文化祭なので人が来ないこの場所に蒼は忍びのように辺りを見ながら入った。
「ど、どうしたの？蒼」
「あのね、A」
教室に入った蒼は真剣な顔でAを見た。両手を握られ、何だか大事なことなのだと察する。
「お願いがあるんだ」
蒼のお願いなら、なんでも聞くのに。
「うん、何？」
蒼の顔が床を見る。そこには紙袋が置いてあった。一体誰の？
「あの袋の中にある服を着てほしいんだ。桃華先輩が作ったんだけど」
モモが？そう言えば蒼のこの服もモモが作ったと言っていた。そんな特技があったなんて驚きだ。
紙袋を開ける。そこには、白が基本で蒼の瞳と同じ色のラインが入っているワンピと黒髪のウィッグが入っていた。
明らかに、女装しろと言っている。
「そ、蒼、これは―――」
「間に合った！？」
思い切り扉を開けたのはモモだった。さっと扉を閉め、ギラついた目でAを見る。
「王子様じゃこうなってると思った！A、覚悟！」
「何！？」
それからの展開は凄かった。Aの抵抗をものともせず、モモはAの制服を脱がしワンピを着せウィッグを付け、低めのヒールの白い靴を履かせた。終いには、
「脱いだりウィッグ取ったりしたら……分かってるよね？」
と脅された。モモに逆らうと怖いことになる。なのでAは「は、はひ……」と答えておいた。モモ怖い。
「はい！ほら王子様！」
モモは女装させたAを蒼の方へ押した。
残りは、蒼の仕事だ。分かっている。
「な、何なの……？」
「ごめんね。少しの間だけだから」
蒼はAの前髪を上げてピンで留めた。金色の宝石は不安そうに揺れている。何をするか言っていないので分からないのだろう。
「うん、可愛い」
黒髪に金色の瞳をした、可愛らしい女性が完成した。どこからどう見ても女の人だ。恥じらって赤くなっている顔が特に。
「それじゃ、失礼します」
「わっ！？」
蒼はAを姫抱きした。高校生男子を軽々と持ち上げる蒼の腕力。一体どこで鍛えたのか。
「少し走るから、落ちないように掴んでて」
「は！？」
モモが扉を開けると蒼はAを抱き上げたまま走り出した。Aはギュッと蒼の首に手を回す。
目指すはグラウンド。
ベストカップルコンテストの舞台だ。
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埋夜冬(プロフ) - ｳｪｰｲさん» 喜んでいただけているご様子ですね！嬉しいです！ (2021年7月10日 22時) (
レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ｳｪｰｲ - (*＾▽＾*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ！！無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - （＾∇＾） (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます！もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作者ホームページ：http://uratuku/sounewawawa1
作成日時：2019年3月5日 23時
