42歩目 ページ2
これほどあの家に帰るのが億劫になったことはない。いつもの蒼ならAがいる家に飛んで帰りたい、くらいには思っていたのに。Aと顔を合わせたら、今の蒼は罪悪感と悲しさで潰れてしまう。
―――――だって、絶対に嫌われた。
それでも家に帰らなければいけないのだ。母にも智仁にも迷惑は掛けたくない。
「……ただいま」
パタンと玄関の扉を閉めると同時にエプロン姿のAが顔を覗かせる。
「お、おかえり、蒼」
眉が下がっていて、怯えているような、窺うような表情。明らかにいつもと違う。ああほら、やっぱり関係が遠くなった。
「ご飯できてるよ」
それでも自分と夕食を共にするのか。優しさで視界が霞む。
「……ごめん、兄さん。今お腹空いてないから、あとにするよ」
無理矢理笑うと、Aは何故か苦しそうに顔を歪めた。仕方ないじゃないか。今一緒にいたら昨日のAのように泣いてしまいそうなのだから。
「そっか……」
優しい想い人は詮索してこないらしい。ありがたい。蒼は好きな人に弱い自分をこれ以上見せたくないのだ。
微妙な空気が辺りに流れる。蒼はまた、心に蓋をするために自室に戻ろうと階段を上がった。
「蒼！！」
神様は意地悪だ、なんて初めて思った。どうして一人にしてくれないのか。どうして。
Aは階段を上がりかけた蒼の手を掴んだ。
駄目だと思ったのだ。このままにしておいたら、また蒼は一人で背負う。『愛されるため』に自分を犠牲にしてしまう。
蒼が何を考えているかなんてAには分からないが、モモの言った通りなら、蒼がこんな泣きそうな顔をしているのを癒すことができるのはAだけだ。
「聞かないよ。蒼が今何を思ってるのかとか、何を隠しているのかとか。でも、もし今日の桐島さんの一件のことを気にしてるなら、僕は大丈夫だから！蒼のこと見てたのは事実だから怒られても仕方ないよ！蒼こそ迷惑だったでしょ？……僕、今日のことで蒼に嫌われたんじゃないかって……」
言いながら語尾が小さくなっていく。蒼に嫌ってないことを伝えるためなのに余計なことまで伝えてしまった。駄目だ。これじゃあ蒼は気を遣、
「そんなことないっ！」
いきなりの大きな声。Aの思考は驚きで停止した。
「そんなことないよ！俺こそ嫌われたんじゃって……不安だった」
蒼が泣いている。涙を見たのは2回目だ。こういうとき、どうするかAはもう分かっている。
「嫌いじゃないよ。……だって、蒼は大切な人だから」
Aは泣いている蒼を抱き締めた。
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埋夜冬(プロフ) - ｳｪｰｲさん» 喜んでいただけているご様子ですね！嬉しいです！ (2021年7月10日 22時) (
レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ｳｪｰｲ - (*＾▽＾*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ！！無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - （＾∇＾） (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます！もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作者ホームページ：http://uratuku/sounewawawa1
作成日時：2019年3月5日 23時
