兎31匹 ページ34
朝ご飯はスクランブルエッグだった。料理店にも負けないレベルの美味しさで、これを毎日食べられる彩兎は幸せだ。
「美味しか？」
「はい、とっても」
それからAは彩兎の支度をそれとなく手伝い、送り出す準備をする。
軟禁のような状態になって１日目だと言うのに、なんだか寂しく感じる。そんなことは彩兎に言わないが。
「家のことは特にしなくてもいいですよ。お昼と夜は冷蔵庫にあるもので作ってください。仕事が終わってから買い物に行くので帰りは遅くなります」
玄関で鞄を持ちながら彩兎はそう言う。本当に新婚のようだ。
「わかったばい」
頷くと彩兎は微笑んだ。だが、なんだか疑問を抱くような笑みだ。何か思っているのかとAは察する。
「どうかしたと？」
首を傾げると、鞄を持っていない方の手がAの腕を掴む。どうやら震えているようだ。少し痛いくらいに腕が握られる。
「……逃げないでくださいね？貴方がいないと私は……！！」
ああ、そうか。自分は今、この男に軟禁されているのだった。あまりにも幸せすぎて忘れていた。
だがいないと死んでしまうほど困るというその気持ちは、Aも同じだ。
「何言うとると」
馬鹿な恋人だ。全く、とため息を付いてから彩兎のネクタイを引っ張る。
「惚れてるのがあんただけと思うとると？言うたやんけ、俺はあんたに、彩兎に一目惚れしたって。逃げようなんて思うとらんし、あんたといる生活から逃げたいなんて思わんたい」
顔を近付けてそう言いきったAは、そのまま彩兎にキスをした。恋人の不安を逐一安心に変えるのが長く付き合える秘訣だと、どこかのテレビ番組が言っていた。
「仕事、頑張ってきんしゃい。俺はこの家で、あんたの帰り待っとるからな」
イケメンすぎる彼氏の行動に、彩兎は頬を染めた。彩兎が感じていた不安をAが絶ちきったことにこの上なく幸せを感じた彩兎は、髪を撫で、その手をAの頬まで滑らせる。
「行ってきます、A」
蕩けるように甘い笑顔を浮かべた彩兎は上機嫌で家を出た。家に帰るのは本能的な行動でしかなかったが、今はもう家に帰りたい。早く時間が過ぎてほしいものだ。
「はぁ……」
彩兎がいなくなった玄関で、Aはため息を吐いた。
「あの笑顔は反則ばい…」
今までも彩兎は綺麗だったが、情事をしたことにより可愛さがあがった。これは彼氏として心配だ。
「はよ帰ってきてぇな……彩兎」
そんな呟きが本人の前で言えるようになるまで、もう少し。
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埋夜冬(プロフ) - 。#vllさん» そうなんですか！？これの発案者は作者のお友達なんですけど、その子がどうしても兎を名前に入れたいって言ってました。ヤンデレ好きなので関係しているかもしれないですね！最後までお読みくださりありがとうございました！ (2019年10月25日 23時) (
レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
。#vll - 兎系の人はやんでれと聞いたことがあります、彩兎くんの名前と関係してそー。と勝手に考えていました。とても面白い作品でした。♪ヽ(´▽｀)/ (2019年10月25日 12時) (レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 紫園さん» どうもありがとうございます！二人とも尊く書けたのからよかったです！方言は私も書いてて楽しかったです！この作品を好きになっていただきありがとうございました！ (2019年5月1日 18時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
紫園(プロフ) - 最後までお疲れ様でした！本当に尊い2人です(´；ω；｀)方言とかも最高でした！ (2019年4月28日 16時) (レス) id: a3fbe17e50 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 李守文さん» 嬉しい限りですありがとうございます！！！私も博多弁書いてて楽しかったです！そして同じように日常で使いました(笑) 今後も作品を出していきますのでどうぞよろしくお願いします！この作品を好きにいただいてありがとうございました♪ (2019年4月27日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年1月26日 16時
