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兎29匹 ページ32

初めて、名前を呼んでくれた……。
そのことに彩兎の胸はいっぱいになった。

「では、貴方はここにいてくれますか?」

「……ああ。もう覚悟決めたばい。俺はあんたと一緒に居る。あんたがいい」

ハッキリと言われた彩兎は次第に瞳を潤ませた。拒否されると心のどこかで思っていたが、愛しの人は彩兎といたいと言ってくれたのだ。嬉しくないわけがない。

「ありがとう、天崎くん」

嬉しさで笑っていると、Aも同じように微笑んでから顔が曇る。何かしてしまっただろうか?まさか帰りたいのか?ああどうしよう何処か行かないように鍵を付けないと。

「なぁ、“天崎くん”って言い方もう辞めんと?あんたに言われるなら名前がよかよ」

あんなふうに思っていたから、可愛いお願いを聞いた彩兎は驚いてから、ふふっと笑った。
そういう言えば今までAを名前で呼んだことがなかったな、と思い返す。
Aは彩兎を名前で呼んだときは告白したときだった。ならばこちらも強く思い出に残るようにAを呼ぼう。

「A……ありがとう。私といることを選んでくれて」

これで彼の思い出に強く残っただろう。そうであってくれると嬉しい。

「――――あんたは、本当に綺麗やね」

その声が聞こえたのは、唇に何かが触れてからだった。Aの顔が近い。Aの瞳の中の自分がどんな顔をしているのか鮮明に分かるくらい近い。

突然のキスに彩兎はしばし呆然とした。何をされたか頭が追い付かなかったのだ。しかし理解した瞬間、

「あ……ッ!」

彩兎は盛大に顔を赤くした。大好きなAが自ら自分を求めてくれたことに彩兎は感激してショートしてしまった。

「何とよ。キス……嫌かったと?」

「い、いえその…!初めてだったので」

初めて?

「……もっと経験しとると思うとったばい」

「だって、大切な人に取っておきたいじゃないですか」

大切な人。それ即ちAだ。
Aは彩兎の肩を軽く押し、布団に倒した。自分も覆い被さりそっと頬に触れる。

「それじゃあ、彩兎の初めて、ぜーんぶ俺がもらってもよかと?」

Aだってこんなの初めてだ。緊張しているし、この先は怖い。
それを感じ取った彩兎は触れているAの手に頬ずりをした。

「もちろんです。この体は、Aのためにあるのですから」

先生と生徒。そんな括りはここには存在していなかった。
あるのは、純粋だがそれ故狂っている、歪みかけた愛情だけ。

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埋夜冬(プロフ) - 。#vllさん» そうなんですか!?これの発案者は作者のお友達なんですけど、その子がどうしても兎を名前に入れたいって言ってました。ヤンデレ好きなので関係しているかもしれないですね!最後までお読みくださりありがとうございました! (2019年10月25日 23時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
。#vll - 兎系の人はやんでれと聞いたことがあります、彩兎くんの名前と関係してそー。と勝手に考えていました。とても面白い作品でした。♪ヽ(´▽`)/ (2019年10月25日 12時) (レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 紫園さん» どうもありがとうございます!二人とも尊く書けたのからよかったです!方言は私も書いてて楽しかったです!この作品を好きになっていただきありがとうございました! (2019年5月1日 18時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
紫園(プロフ) - 最後までお疲れ様でした!本当に尊い2人です(´;ω;`)方言とかも最高でした! (2019年4月28日 16時) (レス) id: a3fbe17e50 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 李守文さん» 嬉しい限りですありがとうございます!!!私も博多弁書いてて楽しかったです!そして同じように日常で使いました(笑) 今後も作品を出していきますのでどうぞよろしくお願いします!この作品を好きにいただいてありがとうございました♪ (2019年4月27日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年1月26日 16時

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