旅 8 ページ10
Aside
主「爺さん、いるか?」
爺「帰ったか」
不機嫌そうなこの顔が驚くことだろう。
主「ほら、鍵。取り返してやったぞ」
思った通り爺さんは目を見開いて驚いた。
爺「婆さん……!よかった、これでアルバムが開ける。おい、礼をしたい。上がれ」
え〜嫌だよこんな爺さんの家に………。
ル「はい!上がらせてもらいます」
おいこらルイーゼお前俺の意思は無視か!
ル「お婆さんのアルバム、私も見たいです」
おーおーグイグイいくな〜。
主「気になってたのか?」
ル「ええ!私の勘が残っとこって言ってるもの!」
何なの?ルイーゼは動物的勘の持ち主なの?
まあ俺もちょっと気になるし上がるけどさ。
んで、その婆さんのアルバムとやらは?
爺「これじゃ」
ドン、と分厚い箱が机に置かれる。
爺「婆さんに“私が亡くなって、爺さんが新たな一歩を踏み出そうと思ったときに開けてちょうだい”と言われていてな。鍵が戻ったことだし、わしも長くない。なら今開けてしまおうと思っての」
爺さんはそっと鍵を差し込む。カチャと音がしてアルバムが開いた。
結婚したときの写真、何処かへ旅行に行った時の写真、花の栞、日記。一つ一つに爺さんは目を細めて懐かしむ。一番下に、何かの手紙が入っていた。
『爺さんへ
貴方がこの手紙を読んでいるということは、私はもう死んでいるのでしょうね。私が死んで悲しくないかしら?案外自分のことは適当だから倒れない生活をしてちょうだいね』
え?この爺さん自分の事適当なの?
『初めて貴方と会ったのは結婚したときよね。政略結婚で勝手に相手を決められて、私はとても嫌だったの。貴方のことも嫌いだった。なのに何故かしらね。いつの間にか好きになってたの。貴方といて幸せだった。家事も子育ても全く出来なくて1人で大丈夫かしらと何度も心配したけれど、貴方は頑張れば何でも出来ることを私は知ってるから。だからやろうとしている新しいことを諦めないで。絶対出来るわ。
最後に、貴方、ずっと愛してるからね。
貴方の妻 より』
爺「婆さん…………」
爺さんは目を開きながらポロポロと涙を溢した。
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2018年1月25日 23時