願い 40 ページ41
「そうだ!Aと再会したらやりたいことがあったんだ」
「やりたいこと?」
Aが首を傾げる。オルバはニカッと太陽のように笑った。
「カレーを、一緒に作りたい」
悪魔だった頃は食べれなかったAの料理。両親との、思い出のカレー。その思い出の中にオルバも加わるのだ。
「作ろっか」
笑顔で頷いたAは外に出る支度をする。まずは買い物に行かないと、材料がないからだ。
財布を持って外に出ると、ちょうど上杉と会った。どうやら完成したレポートを出しに行くらしい。
「Aさん!……と、外国の方?」
確かにオルバは外国人っぽい。悪魔だった頃と変わらない赤に黒メッシュの髪、瞳の色も炎のようだ。
オルバは上杉に近付く。背が高いので威圧感がすごい。
「おい上杉。お前、マシンガントークやめたらちゃんと彼女できるぞ」
「オルバ!」
「え、は?」
駄目だよそんなこと言っちゃ!とAがオルバを止める。上杉は当然とても困惑している。知らない外国人に名前を知られていて、いきなり彼女について言われるのだ。もう逆に怖い。
「ああ、言い忘れていた。俺はオルバ。Aの彼氏だ」
「ちょっ!?」
「は?彼氏?」
爆弾の連続投下でAが疲弊している。だが顔が赤くなり否定しないのでそういう事だろう。上杉は察した。片想いが叶ったのか。
「そうですか。じゃあもう二度と離れないであげてくださいね」
倒れた時に助けに来ない奴だと思っている上杉はオルバを睨む。彼氏が出来たならAを諦めるが、また一人にしたら容赦なく攻撃を仕掛けてやるつもりだ。
「言われずとも隣にいるさ。じゃあな。これからカレーの材料を買いに行くんだ」
Aの肩を抱いたオルバはスーパーの方へ歩いていく。Aも上杉にぺこりと挨拶をした。
その方向を見た上杉は「よし!」と一言、清々しい笑顔で大学へ走っていった。
オルバとAはカレーの材料を買って家に戻ってきた。初めて包丁を握るオルバに手取り足取り教えながら、なんとかカレーが完成した。
「「いただきます」」
初めて食べるカレーに、オルバは目を輝かせた。やはり子供みたいだ。
「美味い!」
これからこうやって、オルバは全てに感動するのだ。カレーを食べ終わったら、あの花畑に行こう。次の日にはカラオケと映画に行ってデートをしよう。やりたい事がいっぱいだ。
幸せを噛み締めて、オルバと笑った。
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ルティン - はい!応援しています!また読みに来ますね! (2021年8月3日 18時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです!!この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます!これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします! (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい!もう3回も読み返しています…!しかも期間を空けて!何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます!!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました! (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか?...神作者じゃないですか!?貴方様の小説最高すぎるんですよ?!思わず泣いちゃったじゃないですか!...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年12月7日 8時