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願い 17 ページ18

なんだそれ、とオルバは思った。死ぬ?コイツが?そんなに今の状態が危険だと?

「嘘だろ…!何でだよ!だってAはあの時俺と出掛けてたんだぞ!いつもみたいなノリで、どこも悪そうには……」

(すが)るようにAを見る。きっと彼も驚いていて、死にたくないと言ってくれる。どんなに虚栄を張っていても人間は死が怖いはずだ。今まで死にたいと言っていた奴らも最後になって嫌だと言うのだ。いつもは死んでいいと言っているAでもさすがに、「生きたい」と、そう願ってくれるはずだ。

でもAはただ頷いただけだった。分かっていたと言うように。初めにオルバと出会った時のように、受け入れようとしている。

それが何故か、オルバには全く分からなかった。

「声は出るかい?」

坂本医師(せんせい)は優しく聞く。Aは声を発しようとした。

「ッ―――――――、ぁ………あ」

枯れたような声だ。まだ完全には回復していない。
ふむ、と医師(せんせい)は頷いて顎に手を当てる。

「まだみたいだね。しばらくしたらまた来るから、少しずつ体を動かしておいてみてくれ。そしたら今後について考えようか」

それではね、とベッドを戻してから医師(せんせい)と看護師は出ていった。辺りは静寂に包まれる。

「……次が、最後か」

消え入りそうな声だ。Aは自分を馬鹿にしたように鼻で笑う。

「もっと、早くに死ぬと、思ってた」

しぶといなぁ、僕も。

呟く姿はまるで他人事だ。死ぬと言われて何故笑っていられる?

「何故……何故笑っている!?怖いだろう!嫌だろう!死ぬのは、この世界で生活できなくなるのは、恐ろしいだろう!どうしてお前は受け入れる?生きるのはそんなに辛いか?死がそんなに嬉しいか!?」

表情筋が戻ってきたようだ。Aがポカンと悪魔を見る。叫ぶように怒鳴られた理由が分からないという顔をしている。

「嬉しくは、ないよ。辛いわけでもない。でもね、僕には大切な人が、誰もいない。僕が死んだところで、誰も、悲しまないでしょ」

両親は亡くなり、病気持ちのAのことを親戚たちは疎んでいた。誰も悲しまないのは明らかだった。

「……俺は悲しむぞ!お前は今まで出会った人間の中で最高に面白いからな!一緒にいて飽きない。それに願いも聞いてない!願いを聞く悪魔として人間の願いを聞けないのは名折れだ!」

悪魔はAの手を握るような仕草をする。心做しか、温かい気がした。

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ルティン - はい!応援しています!また読みに来ますね! (2021年8月3日 18時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです!!この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます!これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします! (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい!もう3回も読み返しています…!しかも期間を空けて!何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます!!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました! (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか?...神作者じゃないですか!?貴方様の小説最高すぎるんですよ?!思わず泣いちゃったじゃないですか!...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年12月7日 8時

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