コソコソ第参拾玖話 ページ39
あれから二週間経ったが、Aは変わらず俺を愛してくれたし、俺も深くAを愛した。
父上は何かを察し、以前のように口うるさく離そうとはしなかった。
千寿郎は以前と比べてAに甘えるようになった。
毎回Aに抱きつき悲しそうな顔をする。
それを見て心が痛かった。
千寿郎と俺、父上の中にはしっかりAの存在が刻み込まれていて、失うのは耐えられないのだ。
だからこそ毎晩、毎晩彼女を求め、彼女が気絶してもなお、愛した。
彼女はただ俺を見ていつも泣きそうな顔をして、ギュッと俺に抱きついていた。
意識が朦朧としている時の彼女はいつも『行かないでっ、行かないで、煉獄さん』と泣きながら呟いている。
いつも杏寿郎さん、と読んでくれるのに、その時だけは必死そうに煉獄さん、と呼んで彼女は泣いて、彼女は眠りにつく。
「失いたくない…」
寝ている彼女を抱きしめて、少し汗ばんでいる彼女の肌に噛み付く。
軽く噛んで、舐めて、また噛んで。
「好きだ、好きだ。どこにも行かないでくれ」
君を離したくない。
失いたくない。
Aはぼんやりと目を開け、俺を見ると優しく笑って抱きついていた。
「A」
君はなぜ死ぬのだろうか。
原因を聞きたいけれどいつもはぐらかされる。
「…そろそろ起きないと…」
布団から出ようとする彼女の腕を引き、布団にまた引き寄せる。
「今日の朝はダメです」
唇に彼女の指が触れる。
「杏寿郎さん今日は沢山任務があるのですから…」
「君を失うのは耐えられない…君を離したくない」
「…今日も私、消えたりしませんから」
Aは優しく俺の頭を撫でて、笑う。
Aは布団から出ると、慣れた手つきで袴に着替えている。
その着替えている後姿でさえもたまらなく愛おしく、涙が溢れ出てきそうになる。
最近の彼女の瞳はいつも何かを決心したような瞳をしていた。
つまりもうすぐ、というわけなのだろう。
俺もゆっくり布団から出て隊服に着替える。
ワイシャツのボタンをとめてくれと頼むと、Aは優しくボタンをとめてくれる。
ボタンをとめている彼女の首筋を眺め、痕を確認し、そっと触れる。
彼女の体が少し跳ねて、杏寿郎さん?と少し不機嫌な声がする。
「君が好きだ」
そう言うと、もうっ…と困った声が聞こえる。
この上なく愛おしくてたまらない。
「君が欲しい」
「もう着替え終わったのでダメです」
断られてしまった。
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古猫丸(プロフ) - yersk0402さん» これはこれはyersk0402様!!いつも胸きゅんコメントありがとうございます〜!!本当に嬉しくて、私もコメントを見た瞬間きゅんきゅんしっぱなしです!(/ω\)いつもコメントありがとうございます!!m(_ _)m (2020年12月1日 0時) (レス) id: a0dec71c2f (このIDを非表示/違反報告)
古猫丸(プロフ) - みゆさん» みゆ様ァァ!!ありがとうございます〜!!。゚(゚´Д`゚)゚。嬉し過ぎてなんと言葉に表せばいいのでしょうか!!とても嬉しくて励みになりっぱなしです!!コメントありがとうございました!!m(_ _)m (2020年11月30日 23時) (レス) id: a0dec71c2f (このIDを非表示/違反報告)
yersk0402(プロフ) - 煉獄さんにもっともっと愛されたーいです!ずっときゅんきゅん、しっ放し!あたしも心臓ばくばくです! (2020年11月30日 22時) (レス) id: 04e5911f66 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - またまた来ましたヾ(*´∀`*)ノ お話が大好きで更新されるのを待ってました(*´ω`*) 今後がますます気になり過ぎて更新されるのを楽しみに待ちたいと思います(つ´∀`)つ (2020年11月30日 22時) (レス) id: ad229492c1 (このIDを非表示/違反報告)
古猫丸(プロフ) - みゆさん» わぁぁぁ!!ありがとうございます!。゚(゚´Д`゚)゚。そう言っていただけると、やる気が出ます〜!!これからもよろしくお願いいたしますっ!!m(_ _)mコメントありがとうございますした! (2020年11月26日 3時) (レス) id: dd08b68fc6 (このIDを非表示/違反報告)
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