第5.29話 託すこと ページ30
タイ兄の腕を掴んでいた手は、火傷を負ったように爛れている。
『誰も信じられない。他人と暮らすなんてまっぴらだ』
その時、都和子先生の背中から垂れていた私の手が
ほんの少し動いた。
「A?」
都和子先生が私を地に横たえると、
気を失っているはずの私の顔に涙が一筋流れている。
タイ兄の記憶が、都和子先生に流れたように
背負われていた私にも同じように、その記憶が伝わった。
しかし、目を開ける気配はない。
顔もどす黒い程に変色している。
毒がまわり、命が危ない事が分かる。
都和子先生は私を抱きしめる。
「御免なさい、タイ。私は貴方に何もしてやれなかった……。
私にできるただひとつの事は、Aに託す事だけになってしまった。
……タイとこの世界を救えるのは、Aしか……。」
そう言うと、コートのポケットに手を入れた。
古ぼけた指輪を取りだすと口に入れ、飲み込んだのだ。
「お姉さま、お兄様、力をお貸し下さい。
レンスイの魂と引き換えにAを回復に導いて下さい」
目を閉じて祈ると、
横たわった私の上に折り重なるようにして倒れた。
「「レンスイ様!」」
二人が、よろよろと都和子先生の方に駆け寄った。
スネリは残された妖力でもっけを回復させたが
妖力が少なくなった途端、毒がまわり始めた。
もっけもスネリによって意識を取り戻すところまでは行ったが
毒の効力は尚も名懲り、飛べる力もない。
しかし、二人は本能で感じるとる事があった。
残された使命が。大事な使命があることを。
二人が見守る中、都和子先生の体が白く眩しく輝きだす。
光りの中で、都和子先生の手足が曲がり、体が弓のようにしなり
銀色の毛並みに覆われた、美しい狐の姿に変わった。
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作者名:フェイル | 作成日時:2010年12月8日 21時