第5.40話 一人になってしまった。 ページ41
私は、足を引きずりながら、もっけとスネリが居た筈の場所へ行った。
そして、倒れている二人を見て、木箱を落とした。
震える手で、もっけとスネリを触り、その胸に耳を当てた。
既に心臓の音がない事が分かると、私は真っ青な顔で言う。
「スネリ、目を開けてこの後どうしたら良いか教えて……
もっけ、喋ってよ。この巻物の意味を教えて」
私は、スネリともっけを揺すり続けた。
眠っているだけだと信じようとした。
スネリともっけの体は、まだ温かく今にも起きて
「あぁ、良く寝た」というに決まってる、私はそう思い込もうとした。
しかし、体はどんどん冷たく、固くなっていく。
「スネリ、もっけ、どうしたの……寒いの?
私が温めてあげるから。除寒冷災符、急急如律令!」
私は唱えるが、それも虚しく、二人の体の状態が良くなる兆しはない。
凄く悲しいはずなのに、涙一滴も出なかった。
この戦いで、涙を流した事はなかった。
「スネリ、もっけ! 都和子先生も死んでしまったのに、
どうして私を一人にするのよ! 目を開けて──……!」
私は叫んだ。
一人になってしまった。このまま私も死んでしまいたい。
そう思った時、私の頬にふわりと触れるものがあった。
手をあてると、スネリの毛が巻き付いた、もっけの羽だった。
タイ兄の胸に突き刺さった光の矢。その元となった羽。
私がその羽を頬に当てると、かすかな声が聞こえてきた。
「A」
「っえ……?」
「泣いているの? 私達の念は、まだこの羽に宿っているの」
「スネリ……」
涙は出ていない筈なのに、声は涙声だったのだろう。
「おい、A。泣くな。まだ大事な仕事が残っているぞ」
「泣いてないよ……」
最終回 悠久の玉 〜封印〜→←第5.39話 2つの木箱と巻物
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作者名:フェイル | 作成日時:2010年12月8日 21時