世界一綺麗な音【宇髄天元】

1音目 ページ2

「_____っ、ぁ」




隣の部屋から聞こえてくる甘い声





「痛いか……？痛いだろ？

ははっ、泣きも喚きもしねぇ……本当に塵だなぁ……！」



私の上から聞こえてくる怖い声


ガンッドンッ


私の体に何か叩きつけられる音




「チッ」

舌打ちしたその人は

私のご主人様


私を痛めつけたりしてストレスを発散するご主人様


煙たい部屋の中で煙草の匂いが鼻に入る

『っ』

ジュワッと音がなってお腹に激痛が走る



煙草を……押し付けられた？

痛い……けど、大丈夫

そのまま過ごせばご主人様はどこかに行ってくれるから

声を出しちゃダメ……

私は何も感じない……人形のままで居るの



「ははっ、つまんねぇ………………

金もねぇしよ……っ！お前のせいだっ！」



沢山私の事を踏みつけて蹴るご主人様


私の心がバキバキと音を立てる






「……もう要らねぇわ、お前

遊郭にでも売ってやるかぁー」



ゆう……か、く？




その日、久しぶりに外を見た
足枷も目を塞ぐ布もない

外は沢山の音で溢れていた

私の身体や顔を見て笑う人や
キモチワルイと言う人も居た


久しぶりに見た私の体は傷や痣が沢山あって
お店のガラスで見えた私の顔はボロボロで
醜かった




キタナイなぁ___




ご主人様は私の事を"ゆうかく"のおばさんに預けた

おばさんは優しかった

とても沢山のお金で私を買い、

暖かいお風呂に入れてくれたり……ご飯をくれたり……お医者さんを呼んで手当をしてくれたり

綺麗な着物も着せてくれた



「貴女は可愛いわ、傷が治れば誰でも貴女に見とれてしまうほどよ……

私がずっと傍に居てあげるからね

今まで良く頑張ったね」



おばさんからする優しい音

トクントクンとなるおばさんの心臓の音

おばさんの目から流れる暖かい涙



初めて感じるものばかりだった_




身体の傷が癒える頃、おばさんは死んだ



私の目の前で。



……沢山血を流して




『ぁ、あ…………ぁ

あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁっ！！！！！！』


私は無我夢中でおばさんを殺した奴を刃物で刺した
何回も何回も



朝になる頃には灰になって消えたが
おばさんは血を流したまま、ずっと日に照らされていた


聞こえなくなった優しい音
冷たくなった体



騒ぎを聞いて集まってきた人達は私を見て人殺しだと、

化け物だと言った




『……ちが……』




誰も私の話を聞いてくれる人はいなかった




私の目からは

おばさんとは正反対な

冷たくて汚い涙が1滴こぼれ落ちた_____

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