君と出会った街

【ストグラ】理由。『勇者』 ページ20

さよる様リクエスト。
MonDというか、Mondoさんいいよね。

今回のお話は、せっかくシリーズ好きって言ってもらえたし勇者で書こうか。から始まって思わぬ方に舵切ってしまって結果勇者ちゃんが街を出た理由という感じのお話になってます。無理やら舵切りしてるので横転しないよう気を付けて下さい。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




とりあえずカジノでもいくかーと、何の気無しにエントランスにヘリを横付けする。先客の車にはALLINのステッカー。まぁ、ヘルアンくんかドラケンさんか白井さんかもだし特に気にせずカジノへ走り込む。

デイリールーレットの後、今日はブラックジャックでもしようかなとテーブルに向かって歩き出した足をすぐに止める。視界にちらりと映り込んだグレーのコートとグラサン、白っぽい髪。私がカジノで遭遇してはいけない人間トップ3のうちの1人だ。

「……」

「どこ行くの？」

「ぎゃあ！！なんで、トランプ見てたのにコッチに気付くんですか！？」

「キミうるさいから……」

さすが、ノールックで敵を撃ち抜けるだけのことはある。どれだけ手元のトランプに集中していようと、死角にいた私に気付くなんて序の口。きっと私には聞こえない音が彼には聞こえているのだろう。

「で、オールインしにきたの？」

「いや、自分でオールインする人なんていないでしょ」

「そう？……」

唐突に話に飽きたのか、また席に戻るMonDさん。直近のMonDさんとの思い出なんて、謎に抱き締められて脅されたことと手錠かけられて差し出されたこととヘリ越し一発で頭を撃ち抜かれた記憶しかない。

一緒にいる義理もないし、帰ろうかな。と、去ろうとした私に「ねぇ、どこ行くの？」と声を掛けるMonDさん。その一言だけで人を止めさせられる才能、やはり彼はギャングのボスなんだ。

「賭け無くていいから隣にいてよ」

「何でですか？」

「……うーん。Aさんがいたら勝てそうな気がする」

そう言って笑ったMonDさんは、その低い声とは真逆と言ってもいいくらい無邪気な少年みたい。ギャングのボス達は皆怖くて悪い人達のハズなのに、どうしてこう皆……純粋な目をしているのだろうか。純白の笑顔の隣で白いハズの私の心がぐらりと揺らいだのはきっと気の所為では無かった。

私にはやりたいことが無い。

【ストグラ】24時間の嘘。→←【ストグラ】ただいま。『勇者』

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す