君と出会った街

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今の掛け合いは絶対に席を外すトコロじゃなかった。Aさんがれむを求めて、わきをがウェスカーに声をかけた。どちらかで返せば丸く収まってただろうに。ただの身内ネタの延長だったのに自分だけ本気になって結果シラケさせるなんて。

手を出せば自動で延々と水を吐き出し続ける蛇口に、なんの目的もなく。強いて言うなら手に当たる水の冷たさが頭を冷やしてくれればいいなって。そんで戻ったら何でも無い和気あいあいとした雰囲気に戻ってればって希望的観測を抱えて。

「マイキーさん」

「うおっ！？……番長さん」

「全然戻ってこないから様子見に来たんですけど、もしかして体調悪いですか？」

そんな事無い、と首を横に振ると番長さんはニヤリと笑った。「じゃあAさんのことかな……」イヤにイイ声でそう言うから余計にドキリとする。

「Aさん寂しがってますよ」

「いや、そんな訳」

「そんな訳無いなら何でネルさんと席を変わったんですかね」

初めこちら側には奥からましゃさん、わきを、俺。で、向かいは番長さん、Aさん、ネルさん。で、座りそうな雰囲気だった。でも現在は番長さん、ネルさん、Aさん。

番長さんの隣がイヤだから、は無さそう。わきをの正面がイヤだから……も、無いか。彼女は優しいから。

「マイキーさんの前に座りたかったから、では？」

「そんな訳」

俺なんて全然喋らないし、なんならAさんにも人見知りしちゃってるし。変に意識してしまうし、彼女に……釣り合うわけ無いし。

「いいから戻ってあげて下さいよ。俺にマイキーさんの事見てきてって言ったのも彼女ですし。……なんならいっそ」

二人で抜け出しても良いですよ。そんな言葉に踊らされるようにして席に戻る。Aさんは目が合うとすぐ俺に笑顔を向けた。それが本当に席に戻ってきた俺に向けられたものなのか、元々笑ってたのかは判断しかねるけど前向きに捉えてみるか。

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