真実は恐ろしく悲しい……。 ページ8
瞬間、どこからともなく走った稲妻が私の小刀に落ち放電する。
びりびりと肌をさす感覚に思わず口角が上がった。
次で決まる。
刀をあわせた瞬間に勝敗が決定する。
そんなときに私とおでん様の身体が突風で吹き飛ばされた。
「戦っちゃダメ！」
「スズネ、どうして降りてきた！？」
「ミコトちゃんが危ないことしようとしてる気がしたから！
隠してること全部知ってるよ。
言い伝えを盾に私になにも知らせないようにしてたんでしょ？
自分の願いを伏せてまで」
私そこまで身勝手じゃないから、ミコトちゃんの幸せは私の幸せだから。
そういって飛ばされて地に伏せた私の腕をつかんで立ち上がらせるスズネ。
「咄嗟に攻撃みたいなことしてごめんなさい、光月おでん様！
あと、勝負に水をさしてしまって。
……私たちはただ海に出たいだけなのです！」
先程までの爛々と輝く好戦的な目が一転してキラキラと輝いたのが見えた。
彼の頭の中では討伐しにいった二対の神をお供に冒険しているのだろうか？
それとも、海に出ることしか頭にないのかな？
「申し遅れました。
光月おでん様、私はミコトでこちらが親友のスズネ。この町でお手伝いをしながら……」
不思議そうにこちらを見るおでん様を見て嫌な予感がした。
回りを見渡すとそこにはボロボロの家が一軒だけ。
そして、回りは全てお墓になっていた。
「ここは数年前に雷神とやらに消された村だ。
娘を差し出さなかったとかなんとかいってその娘が住んでいた1軒の家を残して他は全て雷にうたれて焼け落ちた」
「じゃあ、私が見ていたあの人達は」
「狐に化かされていたかあるいは……」
おでん様の目は優しく、弔うようにお墓に向けられていた。
のちに彼から聞いた話、例の村はたった一人だけ生存者がいたという。
その生存者はしばらく近くの村で暮らしていたが、ある日忽然と姿を消したそうだ。
そしてかつて村があったソコには当時の村人全員分のお墓と手書きの卒塔婆が立っていたのだと。
「私が少しでもお役にたてたのなら良かったのだけれど」
「お前達二人はこの村の本来あるべき雷神風神だったんだろうよ」
三人でお墓に手を合わせ、その場を後にする。
背後から、女性の「ありがとう」という声が聞こえたのは果たして私だけだったのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：宇治銀時 | 作成日時：2021年9月20日 20時
