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約束と約束。 ページ32

「ねぇ、こんなの聞いてないんだけど」

「今更なんだ」

「だって、ローがオヤジのとこに届けてくれるって言ったじゃん!電伝虫で落ち合う約束もしたじゃん!」


確かに電伝虫で連絡を取ったのは数日前だ。

白ひげは約束通り指定した島へ迎えを寄越した。だから風神は返してやった。


「なんで私は置いてってくれないの!?」

「そういう約束だ」


叫び散らすロープでぐるぐる巻きにされた女。

それをさらに身動きがとれないように椅子のあしでロープを踏み、固定して椅子の上に腰かけて完全に動きを封じる。


「約束!?」


白ひげとのやり取りは電伝虫越しでも冷や汗をかくような緊迫したもので、それでも賭けに出たのはどうしても手放したくなかったからだ。


最初に少しだけミコトの声をいれるとヤツはようやくおれの話に耳を傾けた。


向こうの提示した条件は風神雷神の解放、その代わりになんでも差し出すと言ってきた。

だからおれから要求したものは、雷神だ。


向からは焦ったような、それでいて怒りのこもった言葉が聞こえてきたがそれだけは譲らなかった。しばらく粘っていると、白ひげの笑い声と人払いをする音が聞こえてきてヤツは言った。


『小僧、うちの大事な娘は預ける。そっちはとんでもねぇじゃじゃ馬だがやれるもんなら上手く手懐けてみろ』


押さえつけられてもなお睨んでくるミコト。

確かにコイツはじゃじゃ馬かもな……。脳裏に浮かぶのはここまでの航海で彼女が見せた桁違いの強さ。

そして、白ひげがそのあと付け加えた言葉。ミコトはスズネがいないと力を発揮できない。ミコト自身がはじめに言っていた。

つまり、もう彼女の強さには頼れないということ。


「……今度はおれがお前を守ってやるよ」

「いや、だから船からおろせー!!」

ハートの海賊団の日常。→←※おしらせ



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作者名:宇治銀時 | 作成日時:2021年9月20日 20時

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