叡智と異形の犇めく森 ページ12
河村side
目を開く。
さっと回りの様子を確認しつつ、ゆっくりと起き上がる。
どうやら、椅子に座って木の机に伏せたまま眠っていたらしい。
机の上には、大量の本が積まれている。
まるで、勉強中に寝落ちしてしまったかのようだ。
さらに、机の左にも右にも、背の高い、2m以上はある木製の本棚がそびえ立っている。
こんなに高くては一番上の本は誰も取ることが出来ない。
静かで、落ち着いた雰囲気。
ひとまず、身の危険はないと判断し、椅子から立ち上がる。
立ち上がっても見えるものは本棚ばかり。
本棚の間を縫って歩き出す。
まるで迷路のようだ。
いつまでたっても同じ場所を歩いているんじゃないか。
本棚の立つ向きもばらばら、入っている本のジャンルもめちゃくちゃ。
しかも、本棚で遮られているせいか、異常に薄暗い。
こんな中で本なんか読めば、あっという間に目が悪くなるだろう。
「・・・せめて、もう少し分かりやすく置けなかったのか・・・？」
おもわず、誰に言うでもなく悪態をついた。
そのとき、
ｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞ
ﾊﾞｻﾊﾞｻﾊﾞｻ
本棚が、本が、動き出した。
本棚は、地面を滑るように、
本は、鳥が飛ぶように、
どこかのファンタジー映画のような光景だ。
非現実的な現実に固まる。
それに、今下手に動くと、飛ぶ本にぶつかって事故が起きそうだ。
数十秒後
本棚は動きを止め、出遅れ慌てたかのように飛び出した最後の本が、ふらふらと本棚に収まった。
また、元の静けさが戻ってくる。
本棚の位置はきちんと揃い、本は日本十進分類法に基づいて並べられ、室内は自然な光で明るい。
椅子や机も、綺麗に並んでいる。
その一角の本の積まれた机。
本に囲まれて見慣れた顔が伏せている。
慌てて近づき、肩を揺する。
「おいっ、福良！」
すぅすぅと寝息がした。
どうやら、眠っているだけらしい。
横に積まれた本の中から、適当に一冊取り上げ、それで軽くその頭を叩いた。
ばこ、
「いてっ、」
思ったよりもいい音がした。
目を覚ました福良が頭を押さえ、睨んできた。
しかし、すぐに自分の置かれた状況を理解し、辺りを見渡す。
「・・・どこ、ここ。」
「さあ・・・。」
本棚が非常に高いこと以外は特におかしなところはない図書館だ。
いや、違う。
二人して、黙りこくる。
あちこちから、さっきまでは無かったはずの動物の声のようなものが聞こえる。
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はるか(プロフ) - 続き待ってます！！ (2022年1月23日 13時) (
レス) @page16 id: c4a3ef0428 (このIDを非表示/違反報告)
えい - とっても大好きです…！ (2021年8月1日 7時) (レス) id: 5a5b4a4754 (このIDを非表示/違反報告)
冥酩幸(プロフ) - 海町さん» コメントありがとうございます！空間描写は力を入れているつもりなので、そう言っていただけると非常に嬉しいです！！(喜びの舞い) (2020年12月7日 7時) (レス) id: 7edbd75eee (このIDを非表示/違反報告)
海町 - 最高です。描写がメンバーさん達のいるところがよくわかるように書かれていて、とっても素敵です。想像しやすい。 (2020年12月6日 21時) (レス) id: ede98b80e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冥銘幸 | 作成日時：2020年12月1日 23時
