紆余曲折を経て、煙に巻く。 (ページ10)

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結論、ライブは大成功だった。

久々に身体全体に響く音は最高で音楽は自分から切っても切っても切り離せないのかもしれないとまた身体に刻み込まれてしまった。

裏に捌けた私は被っていたフードを取り、覚束無い足取りで一目散に喫煙室へと向かった。

その途中でスタッフさんに心配そうに声をかけられたが大丈夫です。と伝えた後、自分の演奏を1番楽しそうに聴いてくれた彼女に何かしたいと思っていたので手に持っていたままのピックをステージから見えていた彼女の特徴をスタッフさんに伝え、彼女に渡してほしいと無理を承知でお願いして喫煙室へと急いだ。

喫煙室の扉を開けて、備え付けのソファーに腰掛け、震える手で頻繁に吸わない煙草に火をつけて肺いっぱいに煙を吸い込んで息の続く限り煙を吐き出した。

少しばかり噎せたが煙草を吸って吐いてを繰り返していると自分が此処に在ることを証明したげに早く動いていた心臓の音も段々と落ち着きを取り戻していたが気持ちだけは未だに何かに震えていた。

ミスも無くライブを成功させて何も恐れることなんて無いのに。

靴を脱いで少しだけ体育座りのように蹲り、心を落ち着かせようとした。

ふと、頭の中で先程聴いた彼等の曲が頭の中で流れる。

｢……～♪｣

鼻歌交じりに何気無く歌うと、俯いていた私の頭上に影が出来る。

？？｢…それ、俺らの歌ですか…？｣

はっ、として顔を上げるとそこには心配そうな顔で此方を見ている青年が立っていた。