紆余曲折を経て、煙に巻く。 (ページ8)

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先に演奏していた“King Gnu”というバンドの演奏からは自分達の音楽を見せつけてやる、という意気込みが聞こえてくるような演奏だった。

中でも“vinyl”と“McDonald Romance”という曲はとても惹き込まれる歌で彼等から目が離せなかった。

それと同時に私も中途半端な事をしたら失礼だという気持ちも込み上げてきたのも事実だった訳で。

ステージに上がると彼等の演奏でほぼMAXに近かったボルテージは更に上がっており、武者震いが止まらなかった。

早く、早く弾きたい、聴いてほしい、最高の歌を。

そう思うと春彦さんからカウントが発せられて、その後はもう私の魅せれる全てを弾くだけだった。

はっ、と意識が鮮明になった時にはMCでメンバー紹介を秋大くんがしている時だった。

秋大｢…で、今回は…前々回？のライブで一夏の代わりにギターとキーボードとコーラスを掛け持ってくれた“f”が冬也の代わりにベースを弾いてくれます。どう？ベース。｣

｢あ～…順調です、ミスとかしてない…はず…してないですよね？｣

と思わず、後ろにいる春彦さんに聞くと満面の笑みでドラムスティックを使い、大きなマルを作ってくれた事で会場から笑いが零れた。

今の私は前回のライブ同様、秋大くんから強制的に着させられた大きいサイズのフード付きのスウェットを着て、目深くフードを被っているため恐らく観客から私の顔は見えていない。

折角、春彦さんがメイクしてくれたのになぁ。と最後の最後まで言っていたが秋大くんが折れてくれなかったので渋々この格好で出ているのだ。

一夏｢秋大くん酷いからさ、僕の時もfさんとメンバー交代とか言ってたらしいんだよね。酷いよね。｣

春彦｢秋大、そういうとこ。｣

秋大｢なんで俺が一方的に責められてんだよ、春彦も言ってただろ。｣

3人のMCにクスクスと会場のあちこちから笑い声が聞こえており、私も思わず笑ってしまった。