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なんだか騒がしい。

久しぶりにゆっくり眠れてるから、もう少しだけ___

そんな思考とは裏腹に、目は自然と開いていく。



わたしの目に映ったのは、6人の男の人。

お母さんと、お母さんの彼氏じゃない大人は、今まであまり見たことがない。

わけがわからず混乱している私に、紫色の髪をしたお兄さんが声をかけてきた。



「こんにちは、体調はどう?」



戸惑い気味に頷くと、安心したように笑みを浮かべる大人たち。

わたしが寝ているのは小さめのベッドのようだ。

少し大きめの個室には、わたしと、お兄さんたちと、女の人が1人。



「君、お名前なんていうの?」



赤い髪の小柄なお兄さんが、わたしをキラキラとした瞳で見つめてくる。

興味を示されることなんて初めてのことで、どうしていいかわからない。

お母さんにも、お母さんの彼氏にもあまり呼ばれたことがない名前。



「A、です」


「Aちゃんっていうのかー! うんうん、いい名前だね!!」



わたしの名前を知った途端、すごく嬉しそうに笑う赤いお兄さん。

知らない人は怖い。

怖いはずなのに、なんだかこの人たちはあまり怖くない。



「Aちゃんは、お母さんと一緒に暮らしたい?」



優しい声色でそう問うてくる紫のお兄さんに、わたしは少し迷って首を振った。

わたしは要らない子。

きっとまたお母さんに怒られてしまう。

なにより、わたしがわたしでいられないあの家が、わたしは嫌いだ。



「そうだよね、うん、わかった」



少し悲しそうに眉を八の字にしたお兄さんは、じゃあ、と私に向き直る。



「施設で暮らすのは?」


「いや」



散々言われてきた。

施設に行ったらわたしが、お母さんがどう見られるかわからない。

きっとセケンテイっていうものが気になって仕方がないのだと思う。

あの時のお母さんは、今まで見たことがないくらい焦っていたのを覚えている。


施設に行ってしまったら、わたしが壊れてしまう気がした。



「そっか……」



わたしの言葉に頷いたお兄さんは、机の向かいに座った女の人をちらりと見る。

女の人は、諦めたように小さく首を振った。



「じゃあさ、」



優しく微笑んだお兄さんは、わたしに向けて手を差し伸べる。



「俺たちと一緒に暮らさない?」



それまで黙ってわたしたちのやり取りを見ていた他のお兄さんたちも、にっこり笑って私を見つめるから。

信じてみよう。



そう決めて、差し伸ばされた手を取った。

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作者名:? | 作成日時:2023年1月20日 8時

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