小説「彼女の運命」 (ページ1)

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彼女の愚かな選択。ページ1

昔々あるところに、黒髪の少女がいました。
少女、というにはあまりに長く生きていて、
少女、というにはあまりに男遊びが激しい、
少女が、いたのです。

彼女には親愛なる兄がいたのです。
兄は彼女になんの興味も好意も何も示しませんでした。
彼はまるで空気のように、本当にそこに居ないかのように過ごしていました。

過ごす、といっても家で顔を合わせることは殆どなく、
時たま、すれ違ったり、そこに居るという存在感を感じれるだけで嬉しく思うのでした。

彼女には親愛なる友人がいたのです。
私が知っている友人と呼べるのは彼女だけ。
彼女とは本当に仲が良かったのだと思う。
だからこそ、辛いと思ったのだろうけど、

それはまだ後の話。

そして、彼女には好きな人が居たのだと思う。
彼は、親愛なる彼女のものでした。
きっと、彼女には彼か彼女、どちらを選ぶかと言われたら、

彼女を選ぶのだろうから。

のちの、彼女と同じ選択をするのだろうから。

彼女は、本当に好きだったのだのだろう、
彼のことが好きだったがゆえに、愚かなことをしたのだ。

近づくなと言われていた場所に、
心配だからゆえに、失いたくないがゆえに、近付き、

堕ちたのだ。

彼女は、彼女自身も親愛なる友人も、彼も、
全ての運命を狂わせたのだ。

この時から、

のちの話によると、彼女は一度消えかけたらしい。
それを助け、片足をなくした少年は、
親愛なる友人の、彼だった。

そして、この話を彼が彼女に話したとき、
彼女がどれだけ、この世界の有無を疑い、
自分を恨み、嫌悪感を抱き、それでもなお受け入れようとした事を、
彼が知っているのかさえも、彼女は何もわからないのだ。

何も知らないのだ。

彼のことさえも。何も分らなくなってしまったのだ。
何もわからず、何も知らず、

彼も、彼が、探し始めたその時から、その時間が、必要だったのかさえも
分らなくなってしまった。

もう彼女は、あの時の彼女では亡くなってしまったのだ。

あの時、彼が彼女を助けた後、彼女は堕ちていったのだ。

その世界の地の底まで堕ちたのだ。

そして、彼女はこの世界の。あの、少女の中へ堕ちていった。

のちに、”彼女”が成長し、１５年の月日が流れ、
彼と出会うその時に、幸運のはずのその日々を

ただただ、首を絞め、死を求め、自分の弱さに気付く、
辛いとしか感じない日々が来るとは思いもしていなかったのだ。