病室に咲く花に甘いキスを。【名前変換オリジナル】

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とても綺麗で世の中の穢れを知らない、花のようだと思った。

だけど目の前の白い花はどこか悲しげで儚かった。

へたに水をあげたら花弁が落ちちゃいそうな、
そんな感じ。

俺は少しでいいから彼女を元気にしたくて
ポケットからケータイを取り出した。


「ほら、ここ見てて。んで、めっちゃ笑ってて」

「……？うん」


カメラ機能で仲良く２ショットを撮る。

最近インストールした
写真をデコレーションできるアプリをタップする。

デコレーションする写真を先ほど撮ったものに設定して
目をキラキラさせている彼女に渡した。


「ここ、押してみ」

「うん！」


初めてケータイをさわるのか
かなり慎重に指を動かしていた。

彼女が？マークを頭に浮かべるたび俺が少し手助けをする。

そんなことを10分程繰り返していくうちに
彼女らしい、小花を散りばめただけの写真が完成した。


「できたよ！」

「可愛いじゃん。
あんたが言ってたプリクラもこんな感じ」


喜ばせようと思ってそんなことを言ってみる。

少しうつむく彼女。
なんかまずいこと言ったか？


「……じゃないよ」

「え？」

「私は‘‘あんた’’じゃないよ」


まっすぐ悲しそうな目で俺の目をみながら言ってくる。

なんだかちょっと気まずくなって顔を背けながら
「あぁ……、ワリィ」と、そっけなく返した。


「よし、じゃあ私はこれから君のことを
翔太と呼ぶことにいたします!!」


ベッドの上で立ち上から俺を指差す。
あっけにとられていると


「だから、翔太も私のこと花って呼んでよねっ」


なんていたずらな笑顔を浮かべる。


……可愛すぎんだろ。









「こーら、伊藤さん!! 静かにしてください!!」


たまたま廊下を通った看護士さんに注意され
なんだかおかしくなって二人で笑った。








「『 幸せ 』ってきっとこういうことをいうんだね。
　 美味しいお菓子食べながらお話して、なんでもないことで笑って……」

「うん、そうだね」

「私、今すっごい幸せ!!」

「俺もすごい幸せ」

「なんだか、こんなに幸せだったら神様に怒られちゃいそう…」


それはないか、と笑う彼女。

なんだか俺も笑えてきちゃって
２人してまた笑った。

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