病室に咲く花に甘いキスを。【名前変換オリジナル】

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時間はあっという間に過ぎ、午後3時。
帰らなければいけない時間になった。


「あ、そろそろ帰らなきゃ」

「もうそんな時間かぁ。翔太といると、あっという間だ」


花は少し寂しそうに時計を見る。

花と過ごせる時間は、たったの3時間。
前は1日5時間なんて余裕で、それを週に1回だったから……。

この時間がどのくらい貴重か、痛感した。


「お手紙、絶対書くからね。待っててね」


俺の渡したメモを握りしめて、微笑んでいる。
それだけのことなのに、たまらなく愛おしく感じる。


「分かった。ちゃんと待ってる」


そう言って小さな頭に手を乗せると、花は「ふふっ」と笑って。


「またね」


と、少し俯いて小さく小さく呟いた。


「またな」


そう言って、俺は病室を出る。
少しでも早く、病院を出たいと思った。





「どうだった？」


運転席から、母さんがたずねてきた。


「楽しかったよ」


……嘘だ。

本当はたまらなく、怖かった。

管だらけの腕。
細くなった身体。

そして、ふとした瞬間光をなくす、花の瞳。


「そう、良かった。母さんもとても楽しかったのよ」


目を離したら、消えちまうんじゃないか。
そう思うくらい花は、しおれていた。

俺は、目の前の花が怖くて怖くてたまらなかった。


「……ごめん」

「やだぁ、謝らないで。母さんが勝手にしてるんだから。アンタは黙ってお見舞いを楽しみなさい」


俺がもっと、強かったら。
頭が良かったら。
大人だったら。

もっと、花を笑わせてやれたのかな。
もっと長く、そばにいてやれたのかな。
花のこと、怖いって思わずに向き合えたのかな……？

薄れていく意識の中、俺はそんなことを考えた。

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