..35 ページ37
満員電車の中、吊革を持つ俺の逆の腕を握るAさん。
その手から感じる熱が、俺の体全体を火照らす。
電車のアナウンスが俺の降りる駅を知らせる。
『次だね…』
心なしか、寂しげな声色のAさん。
「…そうっすね」
『……』
電車が止まり、扉が開く。
『おみ？』
降りようとしない俺を、不思議そうに見上げる。
そしてそのまま、扉が閉まる。
「Aさん、俺の腕離してくんないんだもん(笑)」
『あ』
…まあ、そんなのは、俺がまだ一緒にいたいって言い訳で。
「送ります」
『うん…』
ふわっと笑うAさんに、思わずにやけてしまう。
『わっ』
電車が少し激しく揺れ、倒れそうになったAさんの腰に腕を回す。
『あ、ありがと〜…』
いつもの喋り方だけど、少し動揺が見える。顔も少し赤い。
それは俺も一緒だろうな。でも、腰に回した腕をほどくことはしない。
ほどなくして、Aさんの降りる駅に到着。
俺も一緒に降りて、改札を抜ける。
するとAさんはまた自然に腕を組んでくる。
「こっからどのくらい？」
『10分くらい〜』
10分かあ、みじけえなあ。
そう思うと本当にあっという間で、すぐにAさんの家に着いてしまった。
『送ってくれてありがとう』
「いいえ」
『じゃあ、また明日ね？』
名残惜しそうに俺に背を向ける。
俺も手を振って、道を引き返そう……って、
「Aさん！」
『え？』
や、やべー、また忘れるとこだった。
「連絡先、教えてください」
『え？あ、うん。……いまさら？(笑)』
笑いながらブレザーのポケットからスマホを取り出して、俺に近付いてくる。
そして、やっと！連絡先を交換した。
「ありがとーございます」
『ん〜』
そしてまたポケットにスマホを突っ込む。
すると、その手をさっと俺の肩に置いて、背伸びをして、ふいに頬にキスをしてきた。
「……え」
『じゃあねっ』
くるっと方向転換して、さっさと家に入っていったAさん。
……え、なにちょっと、今の、ほんと、なに！(笑)
俺がキスされたほうの頬を手で押さえて立ち尽くしていると、Aさんが、家に二階の窓から顔を出した。
『おみ！ばいばいっ』
そう言ってぴしゃっと窓を閉める。
え、ねえ、なんなの！(笑)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 673人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「EXILETRIBE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：山海
| 作成日時：2015年2月14日 21時
