僕だけのヒロイン (ページ28)

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..番外編＊片想いの連鎖ページ28

臣の”Aさんが好き”発言から、二時間。

伊吹と俺だけが残ったカフェのこの席。

先帰るわ、と言って帰っていった臣。

おいおい追いてくなよ、なんて思ったけど、多分、おそらく、臣は俺の伊吹に対する気持ちに気付いての行動だろう。

あいつかっこいいけどまじでずるい。

なんなんだよ、ほんと。伊吹に告白さえさせてやんねーのかよ。

伊吹との幼なじみって関係を、そんなに崩したくねえのかよ。

むかつくよほんと。

…でもやっぱ、今の伊吹の弱みにつけこみて～、なんて思ってる俺も充分ずるい。

ナナメ前に座る伊吹は、さっきまで見せていた笑顔が嘘のように沈んでいる。

なんなんだよこいつも。

俺にだって臣への気持ちを言ったことねえくせに、こんな分かり易く落ち込んでさあ…

そんなお前を見たら、俺だって落ち込むわ。

伊「…はあ、」

おい、ついにため息ついたよ。

「……そんな落ち込むなら、あいつがAさんに向かうの止めりゃ良かったじゃん」

…くそ、優しい言葉のひとつもかけらんねえのかよ、俺。

伊「…そんなの無理だもん。もう分かってた、とっくに分かってたから」

「なにが？」

伊「広臣がたとえA先輩のこと好きにならなかったとしても、私のことを好きになることはなかったよ」

「…そんなことないと思うけど」

Aさんに出会うまでの臣は、確かに伊吹に気持ちが向いてたと思う。

伊吹は首を横に振って、俺の言葉を否定する。

伊「…広臣が私のことを、なんとなく特別って思ってることは分かってる。私も、このまま隣にいたらいつかはつき合ってもらえるかなあ、なんて思ってたけど…もしそんな日が来たとしても、広臣の気持ちはふわふわしたままだよ」

「……」

伊「A先輩が現れる前は、私だってほんの少しの期待を捨てずに、この気持ちを大切にしてた。けど……」

ずっと俯いて話していた伊吹が、パッと顔を上げて、窓の外を見た。

伊「ずっと隣で、見てたんだよ…私……小さい頃から、ずっと。そんな私が、広臣の変化に気付かないわけない。A先輩に惹かれていく広臣を、見て見ぬフリなんてできなかった」

そう言って静かに涙を流した。