僕だけのヒロイン (ページ20)

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冬休みが明け、今日は始業式。

体育館で生徒たちが綺麗に整列している中、校長の長くてつまらない話にゆらゆらして落ち着きのない様子のあの人。

遠くからでも、後ろ姿でも、見つけてしまう………Aさんを。

気にしないように目を背けるも、どうしてもチラチラ見てしまう自分がいる。

……どうしようもねえのかなあ…。

「三年生は、すぐに自由登校となりますが――…」

ほとんど聞いていなかったのに、ふと耳に入った校長のその言葉にハッとする。

…そうじゃん。三年生は、もうあと一ヶ月もしないうちにほとんど学校には来なくなる。

ってことは、直己先輩も放課後図書室に来ることはなくなって。

……Aさんも、俺の席に来ることはなくなるんだ。

寂しいけど、安心したような。

あー、複雑。

始業式が終わり、生徒たちがぞろぞろと体育館を出て行く中、俺もその中で隆二と喋りながらゆっくりと足を進めていた。

『おみ～！』

……え。

『おみっ！』

「Aさん…」

腕をつかまれ、やっと振り向いた俺に、少しご機嫌ナナメって表情のAさん。

あー、もう、超目立ってるって…。

『ねえ、なんで無視すんの』

「え、してないけど(笑)」

『してんじゃん。今呼んでも振り向いてくんなかったし』

やっぱちょっと怒ってるらしい。

いつもの間延びした喋り方じゃない。

「や、空耳かと思って」

嘘です。しっかり聞こえてました。

『嘘だ！初詣のときだって、目が合ったのに声かけてくんなかったじゃん』

「あー、それは…」

言いかけたとき、周りの声が聞こえた。

”やっぱあの二人付き合ってるの？”

”やだ、ショック～”

”こんなとこで痴話喧嘩すんなよなー…”

”年下が好みだったんだ”

つき合ってもねーし、痴話喧嘩でもねえし。

…Aさんは、年下より年上が好きなんだし。

「Aさん、離して」

俺の腕をつかむAさんの手を離した。

…なんでそんな悲しそうな顔すんの。

俺のほうがそーゆう顔してえよ。

「隆二、行こ」

隆「お、おー」

俺の顔をじっと見るAさんを残して、俺は体育館をあとにした。