僕だけのヒロイン (ページ19)

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「伊吹？」

俯く伊吹に近付いて、声をかける。

すると、いつもの笑顔で、ん？と顔を上げた。

「帰って夜食食おーぜ」

伊「夜食？(笑)」

隆「夜食っ？！」

目を輝かせてそのワードに反応する隆二(笑)

「うん。伊吹なんか作ってよ」

伊「私お母さんみたいに料理うまくないよ？」

「知ってるよ(笑)」

伊「ばーか(笑)」

隆「夜食♪夜食♪」

また伊吹んちに帰って、伊吹が作った夜食を食べて、三人で雑魚寝をした。

伊吹のいつもの笑顔に、切ない表情が混じっていたことに気付かないふりをした。

Aさんと直己先輩を見かけて、自分の本当の気持ちがそこにあったことにも気付かないふりをした。

告白されて、好きな人がいる、と言ったのは断る理由をとってつけたんだと自分に言い聞かせた。

どこまで俺は自分の気持ちを誤魔化すんだろう。それも自分自身に。

その理由はちゃんと、はっきり分かってる。

負け試合に、挑んでいく度胸なんてないから。

自分の気持ちさえ自分で認めなきゃ、こんな気持ちなかったことにできる。

…ま、こんなこと考えてる時点で……ってのも分かってんだけど。

どんだけ臆病者なんだよ、俺。

こういう俺の気持ちが、伊吹の気持ちまで振り回してんだとしたら……

めちゃくちゃずるいよな。

元旦の昼頃、伊吹の家をあとにして、隆二と二人で帰路に着く。

隆「あのさ、…」

「ん？」

何か言いかけて、どもる隆二。

いっつも言いたいことははっきり言うくせに、珍しい。

隆「ごめんな？昨日」

「何が？」

隆「A先輩のとこ行こうとしてんの、引き止めて」

別に、デートってわけでもなかっただろうし。と言って何故か落ち込んでいる。

「や、いいって。むしろありがと(笑)好きな人といるとこ邪魔しに行くとこだったわ(笑)」

本当は邪魔したかった、なんて本音を飲み込む。

隆「お前が告られてるとこ、伊吹ずっと不安そうに見てたからさ、それ見てたら、俺…」

そう言ってまたどもる隆二。

…え、もしかしてこいつ………

俺は、隆二の気持ちにさえ気付かないふりをした。