..13 ページ13
「──────…A？…A！」
「えっ？」
「どうした？ぼーっとして。ご飯できたよ」
「あ、なんでもない。ありがとう、勇吾」
今お付き合いしている、伊藤勇吾。
彼はグラフィックデザイナーをしていて、仕事関係で出会ったひとつ年上の人。
知り合ったのはもう５年くらい前。
事務的に連絡をとっている中、プライベートで誘われて。
話とかお酒のペースが合う人で、最初はそんな感じの飲み友達になった。
いつのまにか私は彼に心を開いていて…隆二の話もした。
出会いから別れまで、そして、今でも忘れられないんだということ。
なのに、勇吾は私のことを好きだと言った。
それももう数年前の話で、もちろん最初は断った。
酔い始めると隆二の話をしてしまう私を、それでも優しく受け止めてくれた彼とつき合おうと決めたのが、約半年前のこと。
今はこうして、お互い忙しい合間を縫って家に行き来して。
今日は私の家で、勇吾がご飯を作ってくれた。
優しい彼。
「こないだ、どうだった？結果出すって頑張ってたじゃん、あのＣＭの」
向かい合ってご飯を食べながら、お互いの仕事の話をする。
これもいつもの風景。
「ああ、うん。うまくいったよ」
「そっか、良かったね」
三代目との仕事が決まったことも正直に話した。
隆二との過去を知っているのに、嫌な顔ひとつせず応援してくれた。
でも、隆二と２人でご飯に行ったことはさすがに言えなかった。
後ろめたい気持ちが、私の中でぐるぐるしてるから。
「Aなら大丈夫だよ。次につながるといいね」
「………」
「A？」
「あっ うん。ありがとう」
返事をすると、ニコッと笑う彼。
本当に、優しい人。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 508人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「今市隆二」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
広香 - 読みました！！続き楽しみにしてます！早く更新お願いします！！！ (2018年3月24日 2時) (
レス) id: 2f3743cf16 (このIDを非表示/違反報告)
メープル(プロフ) - とっても楽しみです！！ 更新待ってます！ (2017年8月23日 22時) (レス) id: 84cf98de9d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：山海
| 作成日時：2017年4月5日 18時
