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“好きな人”


男の人を避けてきた私にとって、自分に向けられるそんな甘い言葉は縁遠かった。


元々別にモテるわけでもないし、元彼だって、私が頑張って頑張って、やっと振り向いてくれた人だった。


そんな冴えない私に、こんなに素敵な人が好きだと言ってくれてる。


夢みたいな話を、普通の女の子のように素直に受け入れられない自分が悲しい。


だって、私きっと、剛典くんのこと好きだもん。


すぐにでも「はい、つき合ってください」って返事したいんだよ、本当は。


でも私の行動はきっと剛典くんに嫌な思いをさせるし、お互いに不自由な思いをする。


嫌われるのも怖い……。






「A？」


『はい』


「俺、頑張りたいんだ。まともに会ったこともないのにおかしいって思われるかもしれないし、俺…立場も立場だし、信用もないかもしれない。でも女の子に対してこんなふうに思ったのも初めてで、電話くれて、声聞いた瞬間、もう諦められないって思った」


『…はい…』


「だから、頑張らせてよ、お願い」


こんなふうに話してくれる、剛典くんの表情が見たいって思った。


男の人の顔が見たいなんて、私も思えるんだ。


『…私も、もっと、あなたのことが知りたいです』







剛典くんは嬉しそうに「明日から毎日連絡するから！」と言ってくれて、電話を切るとすぐにLINEをくれた。


＜剛典です！＞

＜聞き忘れたんだけど、彼氏いないよね…？ いても関係ないけど！＞


クス。


駄目だ、私…この人のこと、たまらなく愛しいかも……。




私も頑張ろう。


剛典くんの気持ちに応えたい。


自分の気持ちにも向き合いたい。

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