Scar

..15＊剛典side ページ16

俺が初めて(人2)さんを見たのは、もう約半年は前のこと。


春から夏に変わる時期だった。


俺は皮膚科に行くため高槻病院の受付の列に並んでいた。


いつものクセで周りをキョロキョロ見回していると、受付で困った様子のおばあさんに笑顔で対応をしている彼女がいた。


受付の席をはずしてそのおばあさんの目的の場所を丁寧に説明して、終えて戻って来ると列に並んだ患者たちに文句を言われていた。


彼女は「お待たせして申し訳ありません」とひとりひとりに頭を下げ、笑顔を崩さず対応を続けていた。




それだけのことだった。


彼女の笑顔が脳裏に焼き付いて、俺の心を掴んで離さなかった。


一般的に見ても、特別とびぬけて可愛いとか、そういうわけではないと思う。


うまく説明できない。


それでも彼女の持つ雰囲気に、俺は一目惚れしたんだと思う。






それからは、用もないのに月に一度、彼女の笑顔が見たくて病院に足を運んだ。


メンバーにはストーカーとか、声もかけれないチキンとか、散々な言われようだったけど、彼女は気軽に声をかけてもいい女性とはまったく思えなかった。


いつもの俺だったら相手がどんな女性だろうと関係なく、グイグイいくのに。

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