seven five three ページ5
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『しちごさんくん』
４時間目が終わって、席を立とうとした俺に対して、睡蓮は、氷みたいに高く尖った声を少しだけ柔らかくして、俺に話しかけた。
睡蓮が自発的に話しだしたから、教室にいる奴らが驚いている。
まあ、俺も少し驚いている。
教室にいる奴らが、睡蓮の一挙手一投足を、黙って見ている。
「...何？急いでるんだけど」
早くしなければ、ストロベリームーンは無くなってしまう。
『これ、ありがとう』
そう言って睡蓮は、ピンク色のキャンディーと共に、俺にシャーペンを渡した。
「いや、持ってなよ。まだ授業あるよ」
『いいの。どうせ寝ちゃうから』
君は、へらへらと笑った。
開いた口の隙間から見える歯が、がたがたで少しだけ気になった。
「ならいいけど。あと、俺の名前、七五三掛だから」
『しめかけ？これで、しめかけって読むの？』
君はそう言って、俺のスクール鞄を指差した。
そういえば、１年の初めに鞄の左下の名前を書く欄に名前を書かされたんだっけ。
「七五三」のところまで残っていて、後は全て消えてしまっている。
だから、しちごさんくんって呼んだのか。
「そう。七、五、三、に、掛けるで、七五三掛」
『ふーん、変な苗字』
お前に言われたくない。
「しめ、いいの？ストロベリームーンなくなっちゃうよ？」
そう言って、ひょこひょこ現れた海人。しまった。
時計の長針は４時間目が終わってから、すでに２つ進んでいた。
「...もう、間に合わない」
力が抜けて、席に座った。最悪だ。
『何、ストロベリームーンって』
そう睡蓮は純粋に、首を傾げていた。
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作者名：吐愛 | 作成日時：2020年10月1日 11時
