cider ページ3
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睡蓮は、そのまま眠り続けた。
１時間目が終わって、２時間目が終わって、３時間目が終わった時、睡蓮はようやく目を覚ました。
目を覚ましたばかりの睡蓮は、やはり虚で、しばらくは船を漕ぐように、頭を揺らしていた。
教室が騒がしくなって目を覚ましたのか、ただでさえ大きい瞳を大きく開け、ひとつ大きな伸びをした。
すると、そのまま持っていた鞄から２Lのサイダーを取り出して、がぶがぶと飲み出した。
周りの視線が睡蓮に集まる。それでもお構いなしで、サイダーはどんどん減っていく。
半分ぐらいまで飲んで、ボトルを机の上に置いた時、中村海人が睡蓮の前に立った。
「睡蓮さん、こんにちは」
『あなた、誰？』
睡蓮は、今日初めて口を開いた。
ひんやりとした氷みたいに、落ち着いた高い声。抑揚がなくて、機械みたい。
「俺は、中村海人」
『中村くんは、私に何か用？』
睡蓮は座っていたが、真っ直ぐに海人を見ている。
伏し目がちだった瞳が、上を向く。綺麗に伸びた睫毛の一本一本まで見えるほど、睡蓮は綺麗な目をしていた。
「いや、別に特に用はないけど。話してみたくて」
『そう。なら、寝てもいい？』
海人の返事も待たずに、睡蓮は再び眠りにつこうとした。
「あんたさ。海人くんが話しかけてやってるのに何なのその態度」
クラスでもリーダー的な存在の女子がわざとらしく大きな声を出しながら、堂々と睡蓮の近くまで移動し、威嚇した。
『あなた、誰？』
「いいから、私の言ったことに答えなさいよ」
女はわざとらしく机を叩いた。なんて、くだらない演技だろう。
周りの女子たちも同調し始めて、さらにパフォーマンスは過激化した。
一方で君は、叩いたことで床に落ちたサイダーを拾う素振りも見せなかった。
君はまるで気がない。
『別に話しかけてなんて頼んでない』
そう言って、君は眠りについた。
わざとらしく舌打ちをする女たち、慰める海人、我関せずで眠る睡蓮の黒い髪が、クーラーの風に揺られ、さらさらときらめいていた。
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作者名：吐愛 | 作成日時：2020年10月1日 11時
