Re:endless summer ページ17
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「お前さ、甘えんなよ」
そう言って、俺は睡蓮の胸ぐらを掴んだ。
睡蓮は何一つ表情を変えなかった。
川では滝のように激流が流れていた。その音が俺の怒りを更に加速させた。
「お前が俺に命を預けたら今俺がお前をここから突き落とせばお前は死ぬんだよ！分かって言ってんの」
『分かってる』
高い声を響かすように睡蓮は口を開いた。
『私、龍也にだったら命預けてもいいよって言ったのは、私なんて元々生きててもしょうがないから。
でも、すぐに死ぬ勇気なんてない。だから、緩やかに死にたいの
………緩やかに、死にたいの』
そう言って、睡蓮は泣いた。
泣いたというよりは自然に涙が目から溢れたという方が近かった。嗚咽する様子も過呼吸になる様子もなかったから。
機械の故障みたいに泣いた。
アンドロイドから溢れた涙をそっと俺は拭った。
胸ぐらに掴んでいた手はもうとっくに離していた。
「じゃあ、俺がお前に生きる理由をあげるよ」
『…え？』
「お前、たった今俺に命を預けたよな。じゃあ、俺の好きにする。
遊ぼうよ、少なくとも高校に通ってる間ぐらいは」
そう言うと、睡蓮は泣きながら笑った。
『………うん』
木々の隙間から指す光の数々が、睡蓮の顔を美しく照らした。
涙の一粒一粒がダイヤモンドみたいに眩しくて、まるで蓮の花が美しく花開いたよう、と思った。
「俺は大富豪がいいな」
『大富豪？何それ』
「ルール教えてあげるよ、帰ろう」
そう言って俺たち２人は、梯子山を出た。
もう俺はここには来ないつもりだった。
それでも、俺たちはもう一度ここに来ることになる。
それは夏を生きた端っこ、全てに絶望した俺たちが必ずここに来ることを森は知っていた。
また来いよ、と言わんばかりに、帰り際の俺たちの身体には葉っぱが数枚張り付いていた。
湿っていたそれを剥がすことは難しく、靴の裏に着いた葉は自然に落ちることを待つしかなかった。
睡蓮は、それから数日学校に来なかった。
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blue lightning→←nostalgic dimension
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作者名：吐愛 | 作成日時：2020年10月1日 11時
