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｢この10年でヒョンたちなしで成り立っているものがあまりにも少なくなって、ヒョンたちがいなくなったら生きられないんじゃないかって時々思うくらい」
SC｢それで世界だって？」
｢うん」
｢でもきっと、自分はヒョンたちがいなくても死なないし、生きていけるから。生きていられないっていうのは言葉の綾ではあるんだけど」
そう言ったAが足元に擦り寄って行ったクマの頭を撫でる。相変わらずAの側が好きらしい。
犬は自分に優しい人が分かると言うし、多分それだ。
Aの表情を伺ってみれば、特段目立った変化はなくて、普段と同じ澄ましたような顔をしているように見えた。
自分たちがいなくなったからと言って簡単に死なれたら困るけど、こうやって変わらずそんな風に言われてしまうのも何だか虚しいと思う。
自分たちがそう易々といなくならないと分かっていても、それはそれで。
｢ただね。ヒョン」
SC｢…ん？」
｢それなりに生きていけても、そんな世界では生きていたくないって話をしたかったんだよ。一言でっていうのが難しいからこんなことになってるけど」
｢ハオに手伝ってもらえばよかったかな」
SC｢そうなったらAにとっての話じゃなくなるだろ」
｢まあ、確かに」
SC｢正解も間違いもないんだから。これで十分だよ」
捉え方を間違えれば何も考えていないように見える“分からない”もこうやって話を聞くと何もかも変わってしまうんだから、Aの言う通り言葉ってものは厄介でやっぱり難しいのだ。
ただそれでも、それが少しでも伝わって感情を動かすことがあるから手離したいとも思えないし、簡単に手離せるようなものでもないけど。
｢スンチョリヒョン」
SC｢…ん？」
｢ハニヒョンはときめきだって。かわいいね」
そう言って、自分と目を合わせたAに「そうだな」と頷く。
「クマもそう思う？」とAがクマに問い掛ければ、何かを悟ったのか小さく吠えて、それにAが満足そうに笑っていた。
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作者名：柊
| 作成日時：2023年3月29日 18時
