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伸びてきた手に避ける間もなく、ぐいーっと頬を引っ張られる。
「こんな顔」とAが言って、そんな筈ないだろと考えながら、へらりと笑うAを久しぶりに見たと思った。
｢休みの間、ウォヌに言われたんだよ」
SC｢うん」
｢“お前のことが大切で、その分心配で心配で堪らない人がこの世にはいるんだよ”って」
SC｢…あのウォヌに？」
｢あのっていうか、まぁウォヌに」
SC｢…それで？」
｢スンチョルもそうなの？」
SC｢…ぶっ、」
｢うわ、なに」
SC｢お前が変なこと言うからだろ…」
｢変なことかな」
変なこと、というか中々口にしないこと。
中々、口にできなくなっていたこと。
それをまさかウォヌから経由して、Aに届くとは思っていなかった。
ウォヌは、練習生の中でも淡々としているタイプなのに。いつか、高校生のころに“ウォヌくんとセイって一緒にいるのよく見るよな”と友人の１人が言っていたのを思い出した。
ああ、そうだ。ウォヌってああ見えて意外と…意外とっていうか結構Aのことを気にかけていたんだ。
SC｢……なんでそんなこと思ったわけ」
｢そんなこと思ったっていうか、そうだったらいいなと思って」
SC｢そうだったらって？」
｢自惚れてるとかそう言うんじゃなく、いま一番近くにいてくれる人がそう思ってくれる人だったら、それ以上のことはないなと思う」
｢水いる？」とAが鞄に手を伸ばす。
いい。いらないから。
そんな意味を込めて動いていた手を掴めば、その手を見ながらまたAが自分の名前を呼んだ。
｢あのさ、スンチョル」
SC｢…なに？」
｢きっとこれから先、スンチョルたちが自分の人生そのものになるよ」
SC｢俺たちが…Aのなんになるって？」
｢スンチョルたちが自分の人生になる。だってこれから先、どの瞬間にもスンチョルがいるんだろうから」
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作者名：柊
| 作成日時：2023年1月29日 9時
