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意外とあっさりしていた。
それからのことは、この言葉に尽きると思う。
苦しそうな表情を見せたのは、掃除用の水１リットルを持って山道(階段はあるけど)を登っていたときだけで、それ以外は特に。掃除中も線香に火をつけたときも、手を合わせたときも淡々と冷静にその身体は動いていた。
手を合わせて、目を伏せて、Aは一体何を伝えたんだろうかと思う。今まで来れなくてごめんねとか、元気にやってるよとか。
言い方は悪いけど、ありきたりなそういうやつだったんだろうか。
自分は何をどうすればいいのか分からなかったから、とりあえず、見様見真似だったけど。
｢スンチョラ」
SC｢…ん？」
｢帰ってきたくなかった理由を“帰らない”って言葉よりも前に言えばよかったんだね」
徐にその顔が前を向いて、香炉にある線香の煙をじっと見つめた。ゆらゆらと揺れるところまで追うことはなくて、まあ、追う理由もないんだけど。
Aがこっちを見ないから自分もAを見ない方がいいんだと思う。
Aは目を見て相手を読むってやつをよくするけど、それをされるのは好きじゃない気がするから。
SC｢…ああ、怖いって話？」
｢うん。それ」
｢怖かったんだよ、ずっと。この目でおじいちゃんがいない家とかお墓とか、そういうものを見たらもう逸らしようがなくて、ひとりだってことをどうしても
｢でも、それを先に言ってたら、そしたらスンチョルに変な顔をさせずに済んだね」
SC｢別に変な顔をなんかしてないけど」
｢してたよ」
SC｢してない」
｢してた」
SC｢じゃあ、どんな顔だよ」
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作者名：柊
| 作成日時：2023年1月29日 9時
