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WN｢忘れ物ない？」
｢うん。ない」
Aがうちに来ることになった理由は大きく分けて２つあった。
１つ目は、自分の家族がAに会ってみたいと言ったから。
そんなに話す機会がない学校の話題にも、練習生としての話にも、自分の口から比較的頻繁に登場するAのことがどうやら気になったらしい。
“どんな子？”“どんな話するの？”って。
そして、２つ目。
正直に言ってしまえば、１つ目と比べてこっちの方が理由としての重要性は高いと思う。
WN｢いいの？スンチョリヒョンに何も言わないまま出てきて」
｢？行ってきますは言った」
WN｢…それで？」
｢ああって」
WN｢ああ…」
｢分かったって意味だと思う」
２つ目の理由は、少し前からスンチョリヒョンとAが何故か気まずい状態を保っているということだった。
あのヒョンがAに少し冷たい。まあ、冷たいというかよそよそしいというか。Aとの距離を計り直している気がする。変に近づき過ぎた分を戻して、様子を見ている感じ。
Aも違和感はあるらしい。
それを踏まえて、あれは当分良くならないと思う＿＿と。
A曰く、改善策はないんだそうだ。「自分でもよく分からないから、勝手は動けない」ってそういうことらしい。
まあ、結局、その当分良くならないの“当分”が長期休暇である秋夕に被りそうで、そんな中ヒョンの家に帰るのは厳しいところがあるんじゃないかと今年はチョン家に来ることになった。
WN｢今更だけどさ」
｢ん？」
WN｢日本に帰るって選択肢もあったんじゃない？」
｢ああ、確かに」
WN｢考えなかったの？」
｢考えたけど、やっぱりいいかなと思って」
WN｢いいって何が？」
｢別に帰らなくても」
WN｢Aの家族楽しみに待ってたんじゃない？ほら、Aのヌナとか特に」
｢うーん…まぁ、」
WN｢なに？」
｢待ってるけど、自分は会いに来てほしかったから」
小さめのスーツケースを両手で持ったAがその手元に目線を落とす。
“会いに来てほしい”
珍しくAが放った願望はきっとそのままの意味だったんだろうけど、正直その意味がうまく理解できなかった。
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作者名：柊
| 作成日時：2023年1月29日 9時
