[wrwrd]青に溶ける (ページ10)

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然しこの女癖の悪さで目下有名の鬱先生、男性が最適だろうが、寧ろそのような夫や彼氏を持つ女性を補佐につけた方が良いのではないかと思ったのだが、言われた通り就いてみればまあこの通り。

寧ろ幹部たちの判断は適切だったと言う納得感が、今は私の中では非常に強い。

「男やとやる気出ぇへん」と公言する鬱様にとって補佐官が男と言うのも無い。更に、人妻だろうが彼氏持ちだろうが関係ない鬱様では、完璧に男に興味がない人材を付ける必要があったのだろう。そんな人は『そう言う性癖』の人位か、或は。

まあそうなって選ばれたのが、数少ない女性軍人の中の一人であった私だったと言うだけの事だ。

誤解を招きかねない為言っておくが、別に私に女色の趣味は無い。

閑話休題。

「必要だと思わなかったので」

「必要になったら作るん？」

「まあ、そうせざるを得ないならそうするでしょうね」

へェ、と適当に頷く鬱様。

こう云うのを訊かれるのにつけても、私は本当に何もないなあと思ってしまう。そう言う欲が起きないのだ。興味自体はあるものの、実行する気にはならない。

周りが幹部たちの見目麗しさに騒いでも、まあ奇麗だとは思うし『そう言う事』をされれば胸も高鳴るだろうが、『そういう関係』になる気は更々起きない。

こう言う性格を把握されたから、此の人の補佐になったんだろうと思う。

「なあ」

「はい」

「じゃ、相手を好きになったらどうするん？」

其方を思わず観た。読めない笑顔でにへらと笑っている。

……考えた事も無かった。誰かを好きになると言う前提が、抑も存在して居なかったからだ。

私がもし本当に誰かの事を好きになって、そしたら＿＿＿

如何、なるのだろう。

「……想像がつきません」

「あら」

正直に口にすると、鬱様はそう零した。驚いちゃいないだろう。補佐になってそれなりになる。此の人なら、私がこう返答する事位、把握しているだろう。

「まあでも、」

自分の行動パターンの分析をしてみた。今迄誰かを好きになった事も無いのでそんなパターン分析は何の役にも立たないだろうが。

「相手次第でしょうね」

「何やそれ」

けらけらと鬱様は笑った。自分でもそんなに意味も解らず言った言葉なので、曖昧に微笑を浮かべるより他にない。

之からあるかも知れない未来を「ありえない」と断じる事は出来ない。が、如何も私が誰かの事を心から愛し、好きになる図など、矢張り想像もつかなかった。