[wrwrd]青に溶ける (ページ4)

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「ねぇー、休憩……」

カラン、と高級だろう万年筆を恰も鉛筆の様に雑に、これまた高価な事は確定であろう机の上に投げる様に転がして、疲れたよ、と情けない声を出す。

聴いて居る此方が情けなくなりそうな声に引っ張られないよう、数枚の書類を机の平面で軽くとんとん、と落して揃えながら、其方に流し目を送った。

「さっき休憩したばかりですよ」

余程我が上司にとっては地獄に違いない、万年筆でペン回しを始める姿は宛ら子供である。こんな齢になってもこんなに手がかかるなら、私の様な淡白なのが親なら、見放したかもしれない。

「Aちゃんが仕事の鬼なんよ」
「はあ……」

曖昧な相槌を打つ。そんな事は無い、と言いたいのだが、この上司からしたらまあ、普通の仕事量でも仕事の鬼に位は見えるのかも知れない。

「それは私じゃなく恐らく書記長ですよ」

なのでその呼称は、この国の中枢を担う中で最も苦労していると言っても過言では無いお方に譲る事にする。あの人の様にプライベートも何もなく仕事に没頭する様になれば、最早ワーカーホリックなのでなりたいとは思わない。

が、あの人を見ると自然と頭が下がる。そう言う人である。

「其れ、次元が違いすぎん？」

鬱様はそう唇を尖らせながら呟くと、書類から逃れられないことを悟ってか、再び紙面に向き合う。今日と言う今日は逃す気はないと言う『気』でも察知しているのかも知れない。

此方も奮闘を続ける鬱様のサポートをすべく、出来る仕事は引き受けるし、自分の作業も並行して行っている。が、幹部と補佐官では権限の差があるので、結局彼の負担は雀の涙ほども減らないのが現状なのだろう。

何時もはそんな仕事量にうんざりしてか、仕事もそこそこにさっさと逃げてしまう上司を捕獲するか、諦めてできるものを片付けて＿＿まあ此方が圧倒的に多いのだが＿＿後で絞るか、何方かである。

別に或る程度は本人の自由だと言いたい処なのだが、幹部の膨大な量の仕事をサボりながら熟すと言う事等、ラクダを針の穴に通す方が簡単と云う物だ。だから仕事の支障が出るギリギリ前に、こうして部下が上司を拘束して仕事をさせると言う異様な光景を作ってしまう。

そう言った事を一手に仕切る書記長は、書類提出の期限を間に合うか間に合わないかで出して来たり将又締め切りを過ぎる幹部が多い事から、私なんかより相当仕事上のストレスが多いのだろう。

補足資料をクリップで留め、終わった書類を一瞥した。