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「なまじ知識があると、しゃにむに突進する気迫が、のうなります。


 然し、『断じてやる』と決めて遣ってみれば、案外できるものです」


__松下幸之助



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「はあ、……この案件をですか」


書記長に上司補佐官二人して呼び出され、ほい、と渡された書類に記された案件は、まあ見た事も無いものだった。堅苦しい云い方をすれば、前例がない。


「まあ、基本的には人事を司る事が多い御前等にとっては一寸きついかもしれんけど」


書記長は気まずそうに眼を逸らし、ぼそりと最大に逆らえない単語を呟いた。


「グルッペンが言い出した事やからな」


拒否と言う選択肢は存在しない其のパワーワードに、思わず背筋を張る。あの赤い目を、あの低く威厳のある声を、思い出すだけで背筋が伸びる。


「グルちゃんが? この感じやったら、慣例で行けばシッマとショッピくん辺り……嗚呼、シャオロンが入るかもやけど、其の位の案件ちゃう?」


私の手元にある資料を上からふいと距離を気にせず覗き込む。眉一つ動かさないが、書記長がそんな私達を見て微妙な顔をしているのを知って居るんだろうかと思う。


「俺もそう言うたんやけどなあ……」

「ま、こうと考えたら即行動、グルちゃんやからな」


そんな物だろ、と軽く頷く鬱様は、総統閣下に対して遠慮と云う物を余り感じない。幹部と総統閣下は、上下関係と言うにはあまりにも強すぎる絆で結ばれているからだ。


「や、別にええと思うとるで? 権限的にはぎりぎり、まあ……、ッて感じやけど、元々多分其方の仕事じゃないのは解っとるし、この時期やと、新兵の事、新官の事も含めてそっちも天手古舞やろうし」


書記長は本当に申し訳なさそうだ。真面目な人だから、そう言う事も気にするんだろう。割と強引な所が否めない総統閣下とは違う。失礼だし絶対死んでも云わないが。


「ンー、まあなあ……」


流石に少し険しい顔をする鬱様。其れはそうだろうな、と一人で納得し、資料と概要の示された書類をパラパラ捲ってみた。


事実、缶詰とまでは行かなくてもほぼほぼ書類と人と睨み合って生気を吸い取られかけの鬱様にとっては、新たな案件は避けられるなら避けたいだろう。


まあ私にとっても、済みません無理です、と頭を下げたい処なのだが。




「いえ、やってみますよ」




其の言葉に、幹部二人して眼を最大限……とまでは行かないけど、其れ位に見開いた。鬱様に至っては一寸絶望を抱えた目だった。

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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月20日 18時) (レス) id: fb24f34b5f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:遥彼方 | 作成日時:2019年8月20日 18時

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