お返しの話 ページ15
大吾が風邪を引いた次の日。
半日休んだ大吾はもうすっかり良くなったらしい。
…んだけど。
｢ん"ん"、｣
和｢あれ、A喉の調子悪いん？｣
｢なんやろ｣
和｢のど飴いる？｣
｢いる〜｣
すっかり風邪を頂いたみたいです。
丈｢花粉？｣
｢な気がする。マスクしとこかな｣
駿｢室内でもそんな？｣
｢季節になるとね｣
流｢A、アレルギー重いもんなぁ｣
風邪をうつしたってなると大吾が自分を攻める気がして、
咄嗟に花粉の所為にしてしまう。
謙｢口呼吸になるとしんどくない？大丈夫？｣
｢レッスン中も咳したらあれやから｣
これ以上風邪を回すわけにもいかないので、
マスクを着けてのダンス続行。
振｢もう一回頭から。…A？」
振付師さんの声がやたら遠くにぼんやりと聞こえる。
｢…っ、すいません｣
振｢大丈夫？調子悪いの？」
｢大丈夫です！ちょっとぼーっとしてただけで｣
なんとかレッスンについていくも、
だんだん身体が熱くなってきた気がする。
恭｢Aくん、顔赤いで｣
大｢A、もしかして｣
和｢やっぱりマスク暑いんちゃう？
動くときくらい外したほうが｣
大吾がやっぱり気がついたみたいで、
でも大橋くんの気遣いに言おうとしていたことは遮られて、
そして、七人揃って大声を上げる。
『A(くん)！！』
視界がぐるん、ってまわって、あたまが、…。
身体に力が入らなくなると同時に、
僕の視界はブラックアウトした。
西畑視点
レッスン中に倒れたA。
昨日俺の看病をしてくれたこととか、
レッスン中までマスクをしていたとか、
いつになくぼーっとしていたとか。
そうとしか考えられないのに、
もっと早く気がつけなかったことが悔しい。
風通しの良い廊下のソファで、
Aを膝に寝かせてその顔を眺めながら考える。
｢…ん、｣
大｢A…？｣
｢だいご、…うわ、ごめん、｣
うっすらと目を開け、状況を把握したみたい。
開口一番に謝りだすとはなんともAらしい。
大｢…完全に、うつしたやんな｣
｢…そうかも、笑｣
大｢笑ってる場合ちゃうわ。熱あるやろ｣
｢あつい。｣
大｢顔、真っ赤や｣
大｢…うつしたのは、ほんまにごめん。
けど、無理したことは怒ってるんやで｣
｢…ごめ、なさい｣
昨日懸命に看病してくれたAを
そこまで叱りつけるわけにもいかない。
そしてなにより可愛すぎて怒る気になれない。笑
大｢昨日のお返しやと思って許す｣
｢…ふふ、｣
大｢こんなんじゃ足りひんかもしれんけど、｣
俺にできるお世話はなんでもするから、
今日くらいは甘えてや。
お返しやで。
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作者名：うつつ | 作成日時：2023年3月7日 18時
