うつせみの、君と。５

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これが噂に聞いておった、悪阻というもの。

頭が痛くて、
胸も悪くて、

吐き気を催してるというのに、

幸せな気持ち。


お腹に手のひらを当ててみる。

ここに、私ときみたかさんの、赤ちゃんがいる。


きみたかさん、それを知ったら、
どんな顔、しはるやろう。


がま口を手に、
つっかけを履いたものの、

やっぱり気分が悪い。


なんや、頭痛までする気がする。


廊下に出た途端に、
うずくまってしもた。


そこに丁度、折り合い悪く、

きみたかさんが帰って来はって。


「A！どないしたんや！」


慌てたご様子で、駆け寄って来はる。


「ちょっと気分が悪うて」


「なら部屋で寝てなあかんやろ」


「でも、お豆腐切らしてるんです」


「そんなもん、俺が買うてくる。
いや、豆腐抜きの味噌汁でええやないか。
それより、とにかく中に入ろ」


私の肩を抱いて、部屋の中へ。


大丈夫やと言うてるのに、

お布団を敷かれて、寝かされてしもた。


「夏風邪やろか。
食欲はあるか？」


きみたかさんが、あまりに、心配しはるせいか。

赤ちゃんのこと、話すの、恥ずかしいてたまらへん。


「ほんまに大丈夫です。
もう起きます」


「寝とかなあかん！
熱はないか？」


急に、綺麗な手のひらを、私の額に当てはるから、
頬が熱うなる。


いつまでも、きみたかさんの所作の一つ一つが、
私の胸を高鳴らせる、


「少し熱っぽい気もするなあ。
ほんま心配や」


「違うんです」


「違うとは？」


「やから、風邪とかやなくて・・・
その、」


起き上がって、お腹に手をやる。


私の仕草を見た、
きみたかさんは不思議そうな表情なりはって。


「ん？どういうことや？」


ちらっと、こちらを伺いはった。


改まって聞かれると、
余計に恥ずかしなってしまう。


「あの、えっと・・・
分かって下さい！
お腹に・・・」


きみたかさんの真っ白な頬が、
薄らと赤うなって。


それから。


「・・・もしかして。
赤ん坊？
赤ん坊がお腹に？
ほんまに？」


私に何度も問い詰めはる。


「はい」


うなづいたと同時に、
引き寄せられて、抱きしめられてた。

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