２ ページ47
朝食を済ませて、
皆で協力して、
大きなもみの木を、
裏の蔵へと片付ける。
その後は、
この下宿の皆が皆、実家へと、帰省すると言うて、順々に出て行ってしもた。
大家の中村さんまで、
暮れから正月にかけては、
姪っ子の美佐子ちゃんの実家である、
岡山のお姉さん夫婦のところで、
過ごすという。
「中村荘、
安田くん夫妻に任せておいてもええかしら？」
「もちろんです。
正月くらい、ゆっくりして来て下さい」
Aお嬢様は、
ここを任されたことに、
やり甲斐を感じてはるんか、
少し、緊張した面持ちや。
昼過ぎになって、
今年は帰らん言うて、
最後まで残ってた大倉も、
急遽、大阪の実家で過ごす事にした言い出して、
お嬢様と修太郎坊ちゃんと３人で、
玄関まで見送る。
「Aちゃん、約束してた本。
もう返さんでええから。
俺からの婚約の祝い」
大倉が、数冊の本をAお嬢様に、差し出した。
「えっ、・・・」
Aお嬢様が、驚いたお顔されて、
隣の俺を、ちらっと伺わはる。
「もらっとき。
ありがとうな、大倉」
「あ、いや。
春の婚礼、楽しみにしてるから」
心なしか、
大倉の顔は、翳りがあるように見える。
Aお嬢様のこと、
まさか、本気やったわけやないやろうけど。
角を曲がる、でっかい背中が、
やけに寂しげに見えて。
胸騒ぎがして、追いかける。
「大倉！」
呼びとめたら、俺の方、振り返った大倉は、
「俺、生まれて初めて、失恋したわ。
それにしても、短い恋やった」
そんなん言いながら、
泣き笑いしてて、
せっかくの男前が台無しや。
「大倉、お前、本気やったんか？」
「Aちゃん、
ヤスが選ぶだけの事はあって、
ほんま素敵な人やな。
大事にしてやって。
中村荘、今夜から誰もおらんから。
思う存分、夫婦の生活、楽しんでや」
今の言い方、
なんや、含んでた。
まさか、
昨日のお嬢様とのやりとり、
聞こえてへんよな？
「穴空いてるんか、思うほど、
壁、うっすいからな。
俺がおる時はやめといてや。
独り身には刺激が過ぎる」
大倉にとどめさされて、
ちょお、耳まで熱うなってきた。
「気ぃ、つけるわ・・・。
大倉、大阪まで気をつけて帰れよ。
家族によろしくな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 345人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜季(プロフ) - 移行でまだ続きが読めるの嬉しいです！ (2019年11月7日 22時) (
レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - ちょうど良いところでまたお預けに笑 章大さん優しくて可愛いです。君がためも読んできました！たくさんの更新ありがとうございます！ (2019年11月7日 15時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - ついに2人が…と思ったらお預けで、私が焦らされてます笑 続き楽しみにしています。 (2019年10月29日 7時) (レス) id: 1daab7209e (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - やきもち焼いて、ちょっと乱暴になる章大さんがかわいい！ (2019年10月21日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - おまけの更新、とっても嬉しいです！続きも楽しみにしていますね。 (2019年10月21日 22時) (レス) id: d961b44abd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：fool x他1人 | 作成日時：2019年6月14日 21時
