２ ページ34
「わっ私、顔、洗うて来ます」
そのまんまのお姿で、
廊下に出て行こうとされるから、
慌てて引き止めた。
「そんな格好で出られたら、
男連中の無遠慮な視線に晒されてしまいます」
「そうでした。ごめんなさい・・・」
Aお嬢様が、
昨夜、修太郎坊ちゃんが眠ってはった、
襖の向こうの３畳間で、
こっそりと着替えてはる。
からかいとうなって、
すうっと襖の開いたら、
帯をつけるところで。
振り返って、お顔を真っ赤にされた。
「章大さん！
のぞいてはいけません！」
「昨夜はあんなに大胆でいらっしゃったのに、
お着替えぐらい、見せて頂いてもええでしょう」
「しょ、しょ、章大さんったら。
なっ、なんということ、言わはるんですか！」
きゅっと帯締めて、
昨夜、３階の角やんに差し入れしてもろた、
洗面器と手ぬぐい、
それに、歯ブラシ持って、
部屋を出てってもうた。
すぐムキにならはって、
からかい甲斐あるねんから。
ほんまに愛おしい・・・
幸せな毎日が始まるねんな、って、
しばし、浸ってしもてて。
急にはっとした。
慌てて、廊下に出たら、
冷たい水で、
お顔洗うてはる名前)お嬢様のことを、
大倉が、頬を紅潮させて、
口開けたまんまで、
じいっと見つめてるとこやった。
「Aちゃん、手ぬぐい。どうぞ。
冷たいよな。冬の水」
鼻の下伸ばして、
俺より親しげな、
慣れた口の聞き方してんのは、
なんでや。
大倉は、元は士族の出身で、
一族は皆、軍人らしいて、
Aお嬢様とは、
身分も釣り合うてるし、
お嬢様の方が年若いわけやから、
当たり前やねんけど。
胸がチクっとなる。
Aお嬢様に、
おなご専用の一階の洗面を使うように、
注意し忘れた俺が悪いねんけど・・・
「ありがとうございます。
えっと、」
「大倉です。
隣の部屋の住人で、
大学でヤスの後輩、いや今は先輩の、
大倉忠義です」
大倉のやつ、
普段は、
どれだけ言い寄られても、
おなごになんか興味ない顔してるくせに。
腑抜けになってもうてるやん。
Aお嬢様も、
大倉みたいな、
色男に見初められたら、
すぐに気持ち傾いてしまわれるんちゃうかて。
不安な想いを打ち消すように。
「A。すぐ出かけるから。
支度しよか」
普段にはない、乱暴な口の聞き方、してしもた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 345人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜季(プロフ) - 移行でまだ続きが読めるの嬉しいです！ (2019年11月7日 22時) (
レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - ちょうど良いところでまたお預けに笑 章大さん優しくて可愛いです。君がためも読んできました！たくさんの更新ありがとうございます！ (2019年11月7日 15時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - ついに2人が…と思ったらお預けで、私が焦らされてます笑 続き楽しみにしています。 (2019年10月29日 7時) (レス) id: 1daab7209e (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - やきもち焼いて、ちょっと乱暴になる章大さんがかわいい！ (2019年10月21日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - おまけの更新、とっても嬉しいです！続きも楽しみにしていますね。 (2019年10月21日 22時) (レス) id: d961b44abd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：fool x他1人 | 作成日時：2019年6月14日 21時
