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「A、苦労をかけて。
すまん・・・。
修太郎、Aの言うことをよう聞いて。
住倉のお家のご迷惑にならんようにするんやぞ」


厳格なお父様の、その目には、涙が浮かんでる。

その間にも、
何度も何度も咳き込まれて・・・

お父様の無念を思うと、
涙をこらえるのが精一杯や。


西へ向かう汽車の発車を知らせる、
汽笛が鳴り響く。


胸が切り刻まれるかのように、痛む。

まるで見えへん、血が流れておるように。


「章大さん・・・」


最後にどんな言葉を、
おかけしたら良いのか。

分からずに・・・


「今年も、お誕生日の贈り物、
出来ませんでした。
私も、一度くらい、章大さんに、
何か差し上げたかったのに」


そんな、そぐわへんことを、
言うてしもた。


「もう、もろてます。
大切な栞を」


章大さんが、
お着物の胸元を、
手のひらで押さえはる。


「いつも持っていてくれはったんですか?」


もうとっくに捨てはったとばかり、思うてた。


「僕のお守りですから」


そう呟いて、

章大さんは、

腕の中に、包み込んで、下さった。


「A、すぐに迎えに来るから。
愛してる」


耳元で囁きはった後、
汽車に乗り込まれた。


すぐに、扉が閉まって・・・


大きな真っ黒な陸蒸気の後ろ姿が、
遠ざかっていく。


追いかけようとして、
修太郎の手を引いておることを思い出して。

押しとどまったけれど。


堪えてた涙が、
後から後から溢れ出す。


初めて、章大さんが、
愛してる、そう言ってくれはったのに。


さよならの時やなんて・・・


力が抜けて、
プラットホームに座り込んだ私の頭を、
幼い修太郎が、その小さな手で、
撫でてくれてる。


「A姉様。
泣かんといて・・・
僕が守ったるから」


「そうやね。
修太郎がついててくれたら。
怖いものなどあらへん・・・」

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亜季(プロフ) - 移行でまだ続きが読めるの嬉しいです! (2019年11月7日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - ちょうど良いところでまたお預けに笑 章大さん優しくて可愛いです。君がためも読んできました!たくさんの更新ありがとうございます! (2019年11月7日 15時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - ついに2人が…と思ったらお預けで、私が焦らされてます笑 続き楽しみにしています。 (2019年10月29日 7時) (レス) id: 1daab7209e (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - やきもち焼いて、ちょっと乱暴になる章大さんがかわいい! (2019年10月21日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - おまけの更新、とっても嬉しいです!続きも楽しみにしていますね。 (2019年10月21日 22時) (レス) id: d961b44abd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:fool x他1人 | 作成日時:2019年6月14日 21時

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