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葵ちゃんは、
私の手を引いて、
人力車の中に乗り込まはった。
「葵ちゃん、
あのお店はもう、
閉店したんやなかったん？」
「新しい店主が、
喫茶千景を復活させたんですって。
火事も倒壊も免れて、
細々とだけど、
営業を再開してらっしゃるの。
大野さんていう、
実業家の方が経営されてるらしくて。
その方ね、なかなか素敵なのよ。
これは内緒だけど・・・」
狭く、がたがたと揺れる車の中、
葵ちゃんが、耳に唇を近づけはる。
葵ちゃんのお着物から、
ふわっとええ香りがして。
自分の姿が、
今、どんなにみすぼらしいかと、
いたたまれへん気持ちになった。
「その方、前の店主の、
千景さんの恋人だったらしいのよ。
でも振られちゃったんですって。
あの震災の日、
千景さんが、本当にお好きな方のところへ、
行ってしまわれたとかで」
「そう・・・」
すみれさんは、
お父様のこと、心から愛して下さってる。
それだけで、胸があったかあなる。
「半玉さん、芸者さんがいらっしゃる、
神楽坂の置屋もお座敷も、
大野さんの持ち物なんですって」
すみれさんが、
芸妓さんをしてはった神楽坂。
一度だけ、二宮さんにお連れ頂いて、
章大さんを訪ねて行った事がある。
狭い路地や、急な階段に、
艶やかな、
舞妓さん、芸妓さんが、
闊歩してはって、
場違いな、別世界へ迷い込んでしもたような、
そんな気になった。
喫茶千景の看板は、
痛んで、傾いてはいるものの、
お店はあの頃のまんま、
そこにあった。
扉を開けると、
チリンチリンと、風鈴が鳴る。
そないなこと、あるはずもないのに、
中央の丸テーブルで、
シガーをふかして、
新聞を読んではる、
章大さんが、今もそこにいはる気がして・・・
「いらっしゃい。
お嬢ちゃん方、二人かい？」
出迎えてくれはったんは、
きっと、新しい店主やておっしゃる、
大野さんという方。
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亜季(プロフ) - 移行でまだ続きが読めるの嬉しいです！ (2019年11月7日 22時) (
レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - ちょうど良いところでまたお預けに笑 章大さん優しくて可愛いです。君がためも読んできました！たくさんの更新ありがとうございます！ (2019年11月7日 15時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - ついに2人が…と思ったらお預けで、私が焦らされてます笑 続き楽しみにしています。 (2019年10月29日 7時) (レス) id: 1daab7209e (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - やきもち焼いて、ちょっと乱暴になる章大さんがかわいい！ (2019年10月21日 22時) (レス) id: a8bccc7358 (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - おまけの更新、とっても嬉しいです！続きも楽しみにしていますね。 (2019年10月21日 22時) (レス) id: d961b44abd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2019年6月14日 21時
