検索窓
今日:12 hit、昨日:3 hit、合計:129,940 hit

ページ25

Aside


年が明けて、大正11年、1月。

私は東京で退屈なばかりの毎日を送ってる。


お父様が、
女学校などやめて仕舞えばええ、
おっしゃるせいで、
毎日、家の中に閉じこもりきり。



ほんまは章大さんと、
きらびやかな東京の街を出歩いてみたい。


陸蒸気の中でのお約束、
章大さんはお忘れになってしもたんやろうか。

それとも、あのお約束も、
外套の下で、指と指を絡ませてくれはったことも、

全部、気まぐれやったんやろうか。


章大さんは、
こちらにある私設大学の法科に編入なさって、
忙しい日々を送ってはる。


京のお家と違って、
こちらの敷地は広過ぎて、
お姿をお見かけすることもほとんどない。


出てくるのは、ため息ばかり。


「姉様。
修、お歌、聴きたい」


修太郎にせがまれて、
大広間の蓄音機で、
レコードをかけてあげる。


「赤い鳥、小鳥、なぜなぜ赤い。
赤い実を食べた」


修太郎のたどたどしい歌は、
ほんまに可愛いらしい。


それに合わせて歌っていたら、
修太郎は、
急にとても良いことを思いついたように、


「僕、お庭で鳥、探す!
シャボン玉もしてくる!」


目をきらきら輝かせて、
駆け出して行く。


慌てて、追いかけようとしたところ、
こちらの下働きをしてくれてる、
下男の俊二くんが、


「僕が行きます」


そう言うてくれて。

ここの暮らしにすっかり慣れた修太郎は、
俊二くんによう懐いてるから、任せることにした。



一人になると、ついぼんやりしてしまう。


蓄音機のレコードを直そうと、
手に取った時。


大きなお腹を庇いながら、
千景さんが広間に入って来られた。

いつもなら、自室に籠られてるのに・・・


「レコードをお聴きになってたの?
童謡では、Aさんはつまらないでしょう」


千景さんが、棚の扉を開けて、
その華奢な指で取り出した、
一枚のレコード。


流れてきたのは、

流行りに流行った、

松井須磨子さんの、ゴンドラの唄。

2→←12



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (157 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
375人がお気に入り
設定タグ:安田章大 , 関ジャニ∞
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みき(プロフ) - 昨日foolさんが話題にしてくださったので、章大さんのうつせみの〜も、また読みにきました!やはり涙が( ;-;) (2021年5月26日 12時) (レス) id: c6ee858f5f (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 章大さんとのデート楽しかったです!お姉さんとも再会できて良かった。しかし切ない姉弟の道のり。お姉さんも幸せになって欲しいな。 (2019年5月24日 22時) (レス) id: 48f0771830 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 個人的には今の「うつせみの…」が好きです♪ (2019年5月24日 12時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ぁぃ岡ちゃん(プロフ) - 完全な恋人。は、このお話に追いついてすぐに読みました!!!笑 foolさんの短編集ってオチが凝られてて難しくて理解できない時とかもあるんですけど、何度も読み返してちょっとずつ理解していきます♪ (2019年5月24日 3時) (レス) id: 33dffdafbe (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 想いが通じて良かったー。章大さんが予想外の男らしい行動で引っ張ってくれるので、着いていきます。 (2019年5月21日 22時) (レス) id: 48f0771830 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:fool x他1人 | 作成日時:2019年5月7日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。