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手作りらしい栞には、
あやめの花びらが、
押し花にして挟んであった。
ほととぎす、鳴くや皐月のあやめ草
あやめも知らぬ恋もするかな
有名な和歌と、その下に、
空蝉に、あやめの君と。
お嬢様のたおやかな女文字で、
そう付け足すように、書かれてある。
いつの間にか、
すっかり大人になられたお嬢様に、
いつ、男としての本能が、
揺さぶられるか・・・
初めて、それを怖いと思った。
師走も差し迫った頃。
松下家の引越しがついに決行されることになった。
その前日。
やはり諦めがつかずに、
大学の友人のつてで稼いだ日銭を握りしめて、
生き別れた姉やを探しに、花街へと向かう。
器量好しの姉やは、
ハナマチで高値で売れると、
あの日、僕らを連れ去った男衆が話してた。
大人になってその意味を知った時の、
僕の絶望は、
言葉にならん程やった。
姉やは、
可愛らしいて、
誰より優しいて、
その上、正義感の強い人で、
僕の何よりの自慢やったのに・・・
大学に入ってから、
遊郭やら、置屋やらを回って、
姉やのことを探し続けてるけど、
誰も、
尼崎から来た、
すみれというおなごは知らんと言う。
僕よりも８つ程、年上やったから、
もう誰ぞに身請けされてしもたんかもしらん。
置屋ならともかく、
遊郭にでも売られておったら、
今、生きているという確証さえない。
あんなに大好きな姉ややったのに、
今となっては、
記憶は薄れてしまって、
その顔も、声も、
朧げにしか浮かんでけえへん。
それさえ、僕が後から創り上げた、
虚像かもしれへんかった。
手がかりは、
子供の頃の写真、たった一枚きり。
最後の夜も、収穫などなく、
肩を落として、
祇園の巽橋を渡りかけた。
その時、
妖艶な夕闇の中にあって、
場違いな、
女学生の袴が翻るのが、見えて、
思わず目を見張った。
まさか、こんなところに・・・
Aお嬢様が？
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みき(プロフ) - 昨日foolさんが話題にしてくださったので、章大さんのうつせみの〜も、また読みにきました！やはり涙が( ；-；) (2021年5月26日 12時) (
レス) id: c6ee858f5f (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 章大さんとのデート楽しかったです！お姉さんとも再会できて良かった。しかし切ない姉弟の道のり。お姉さんも幸せになって欲しいな。 (2019年5月24日 22時) (レス) id: 48f0771830 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 個人的には今の「うつせみの…」が好きです♪ (2019年5月24日 12時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ぁぃ岡ちゃん(プロフ) - 完全な恋人。は、このお話に追いついてすぐに読みました！！！笑 foolさんの短編集ってオチが凝られてて難しくて理解できない時とかもあるんですけど、何度も読み返してちょっとずつ理解していきます♪ (2019年5月24日 3時) (レス) id: 33dffdafbe (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 想いが通じて良かったー。章大さんが予想外の男らしい行動で引っ張ってくれるので、着いていきます。 (2019年5月21日 22時) (レス) id: 48f0771830 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2019年5月7日 15時
