柊の木 ページ5
寒い冬、クリスマス。
沢山のライトアップされた家、クリスマスソングの響くお店とその街並みに今年も逃げるように毎日を過ごしている
約束をしたあの日から5年経ち、今年は約束の年だ。
彼は来ないだろうと私は密かに確信している。
彼はかっこいいし性格もいいからきっとどこかで幸せにしているのだろう。
だから来なくてもわたしには何も言えないんだ。
なんていいながらワクワクして柄にもなくオシャレしているのは来るだろうと信じていたいからなのかもしれない。
午後6時。
クリスマスだから今日は会社に行っても定時で帰らされることとなった、、上司は奥さんとイチャイチャするんですと。
いいよね。
ぽそっと浮かび上がった言葉を仕方ないか、と緩く首を振ってライトアップされた街並みから早歩きで逃げていく。
…クリスマスは苦手だ
「…着いた」
誰もいない柊の木に到着する。かじかむ手を擦り近くのベンチに腰掛ける。
先程買っていたココアを開けて少し飲むとココアの暖かさがじわっと体に広がる。
何して待とうかな。
そっとスマホを開いて時間を確認すると時刻は6時半を過ぎたことを示す。
後3時間以上。
待ち合わせはクリスマスの午前零時。
場所はこの柊の木の下。
選択肢は２つ。ここで待っているか。それとも一回家に帰るか。
家に帰って仕舞えば着替えられるし準備もできる。往復は約1時間。
…カフェに入って待っていよう
7時まではやっているだろう、少し暖まれればいいのだ。
カランカランといい音がなるドアを開けると店内にはカップルが多めである。
そんな光景を横流しに見てメニューに目を通す。
ミルクティー…か。
これにしよう。近くにいた店員さんを呼び止めて注文する
「ミルクティー１つお願いします」
「かしこまりました」
クリスマスまでお仕事大変だなぁ。とその背中を見送り雑誌を手に取る
薄っぺらい音が規則的になる中１つのページで手が止まる
「ハリウッド特集！！」
そんな見出しのついたページの真ん中に、彼は堂々とタキシードを着て写っていた。
さすが有名人。活躍してるなぁ…
彼の名は「比嘉 龍樹」higa tatuki 又の名を「比嘉 龍」higa ryuu
後ろが芸能活動するときの名前で前が本名。
本名は使いたくなかったと言っていた気がする。
「お待たせしました」
絶妙なタイミングで店員が持ってきたミルクティーを飲みながら約束の時間を待っていた
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