【オリジナル】白き夜、星屑の空。 (ページ16)

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薄氷の上を生きる僕らページ16

俺は、今生きている。
くそ寒い道を歩いている。
落ちそうで落ちない、割れそうで割れない
薄氷の上を歩いている。

＊

何となくで就いたアルバイト終わり。そういえば今日から11月だと、街頭のテレビが告げていた。どうりでで最近寒いわけだなぁとか、もうそろそろヒーターを出すべきかを考える。
店の賄いで満たされた腹と、その余りの詰まったタッパの入ったリュックサック。に、最近入った給料。
何も不自由なことはない。

そこで、ふと立ち止まる。

ない、本当に？
自由だと、思ってるのか？
こんなのでいい？本当は、あんなことやそんなこと、したかったんじゃないのかーー

俺の中で、そんな声がした。
後ろから追い越す街の人たちが、迷惑そうな顔や哀れむような眼差しを向けて去っていく。
俺は地面を見つめる。灰色とも黒ともつかないコンクリートが、俺を見つめ、ドロドロ、思考の渦へと巻き込んでいく…

…違う、俺は……！
いや、でもーー
そんな、違う、違う…

俺はーーー！

チリン―――――

澄んだ、鈴のような音とともに視界に勢いよく金色の鈴が飛び込んできた。
それはドロドロの渦にポチャンと投げ込まれたようで、そこから俺を引き上げたようにも見えた。

俺はそれにごく当たり前のように、手を伸ばし、そっと手の内に包みこむ。
そして、何かに吊り上げられたかのようにしゃんと前を向き、真ん前を歩く人の肩に手を伸ばしてー

「すいません、これ、あなたのではないですか？」

うわ、何やってんだ、俺。
そう思考が追いついたが時すでに遅し。

その人が振り向く。見ると、男か女か見分けのつかぬような見た目の子と目が合った。
と鈴を見たとたんに、うわぁっ、と心底驚いたようで、泣き出しそうにキュッと顔を変えたあと、花が咲くような笑みを浮かべ、
「お前さんが拾ってくれたのか？感謝するぞ、ありがとうな」
金のぴかぴかで、まるっこくて綺麗な鈴。
そこに器のように伸ばされた手を見て、俺はこの子のことが気になってしょうがなくなってしまった。
女のような細い華奢な指と手のひら。それは、寒さに凍えて真っ赤に染まっていた。手の先はあちこちがさかむけていて、青紫色に変色している。
そこに、鈴を落とし込む。と、チリンと心地の良い音が流れてきた。

俺は、もしかしたらおかしくなっていたのかも知れない。
だって、
「お前、大丈夫か？」
こんなこと、聞くような柄じゃねぇのに。
思わず、口から言葉が飛び出していた。