【オリジナル】白き夜、星屑の空。 (ページ15)

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年初めは想定外から 2 ページ15

ちらりと画面に視線を向けるとあの子からメールが届いていた。ただ一言｢楽しんできてね｣とだけ記されたメールに含まれた意味と汲み取ってしまい、なんともいえないような気持ちになる。
｢あいつ……！｣
｢どうかした？｣
｢いえ、気にしないでください｣
こんなものを見せるわけにはいかない。短い文章ではあるが、要するに“私が折角設けた機会なんだから精一杯楽しめよ”ということだろう。有難いんだか迷惑なんだか。
周りにはカップルが何組もいるし、自分もその中の1つとしてうまく溶け込めているような気がはしなくもない。そういう関係ではないけど、少しくらいはその気分を味わってみたい。
｢参拝終わったらおみくじ引くでしょ？｣
｢はい｣
｢今年こそはいいの引きたいんだけど｣
先輩は不運な男として学内では有名で、聞くところによると、おみくじで凶より良いものを引いたことがないのだとか。それでも常に笑顔でポジティブなのだから神様も少しくらい運を分け与えてもいいはずなのだが。
｢まあ、良くて吉かな｣
｢末吉の間違いじゃないですか？｣
｢……君たまにそういうところあるよね｣
むっと不機嫌そうな顔をしながら人混みの中に入っていく。ぶつからないように周りばかりを気にしているといつか先輩とはぐれてしまいそうだが、繋がれた左手から感じる体温と彼の男らしい手がその不安を拭い取る。
人が多くて待ち時間も長く寒くはあるけど、やはり隣に好きな人がいるとそんな時間と苦ではなくなるわけで、案外あっさりと参拝は終わった。
ちなみに、先輩はおみくじで今年は小凶を出して不満げだったのはここだけの話である。